子育てをしながら仕事をして、暮らしを支えるシングルママ。家計や仕事に悩むママも少なくありません。母子家庭の世帯収入は、児童扶養手当などを足して見ても全国の児童のいる世帯の約半分というデータが出ており、家庭の苦しい生活事情を示しています。母子家庭を支援する団体に話を聞きました。(JAMMIN=山本 めぐみ)

シングルママに寄り添い、トータルなサポートを行う

団体に寄せられる相談の中には、緊急性が高いものも多いという。母子家庭を緊急訪問し、食事を手配

東京を拠点に活動するNPO法人リトルワンズ。今年で活動10年目を迎える団体です。

「毎月、母子家庭向けの交流会やイベントを開催したり、全国のシングルママから仕事や生活に関する相談を受け付けたりしているほか、空き家を活用したお部屋探しのお手伝いも行っている」と活動について話すのは、リトルワンズ代表の小山訓久(こやま・くにひさ)さん(41)。生活に関する相談は、年間300件ほどあるといいます。

お話をお伺いした、リトルワンズ代表の小山訓久さん

「生活にお困りの方が多く、統計的にいえばお金のこと、仕事のこと、子育てのことがベスト3。ただ、お金のことや仕事のこと、子育てのこと、その他のこと、それぞれの悩みは、それぞれが独立しているわけではなくリンクしている。仕事の話になるとお金や子育ての話にもなるし、学校のことで困っているという話になると住む場所の話にもなる」

「いろんな要素が複合的に絡み合っていることが多いので、私たちとしてはできるだけトータルなサポートで、お母さんと子どもたちが安心して暮らせる環境づくりのお手伝いをしている」

母子家庭が抱える課題

母子家庭が経済的に窮地に追い込まれてしまう背景を聞くと、小山さんから次のような答えが返ってきました。

「年収が少ないこと、養育費を受け取る機会が少ないことなども理由として挙げられる。多くの母子家庭の場合、収入源はお母さん一人。手当があるとはいえ、お母さんが病気をしてしまうと生活がストップしてしまう」

「子どもが病気をしても、お母さんが子どもを看病しなければいけないので働きに行くことができない。働いて生活費を稼ぐことと、育児、自分のこと、将来のことなど、全てがお母さん一人の肩にのしかかっている」

「子どもが病気になった時に病院に預けることもできるが、お金がかかる。もっとラクに預けられれば良いが、お母さんが一人で踏ん張るしかない現実がある」と指摘する小山さん。

「ちょっとした悩みや不安があるときに、誰かにSOSを発信できるような、気軽に相談できる世の中になれば」と話します。

独自の奨励金で、制度が届かない部分をサポート

「お母さんは我が子のことを最優先にしているが、それでもできないことがある」と小山さん。

「経済的な事情で塾にいけなかったり、習い事を途中で辞めてしまったり、最初から習い事をするという選択肢が無い場合もある。経済的な理由で、食べるものや着るもの、住まいの選択肢が狭まってしまうことも多い。大人から見れば小さなことかもしれないが、子どもたちにとっては人生の一部。それが不足してしまうのは、すごく大きな問題」

一方で、国や自治体の母子家庭支援の現状については次のように指摘します。

「母子家庭には手当や控除などもある。自治体によっては、水道代や電車代が無料になることもあり、行政としては懸命に支援を届けているが、支援としてまだまだ幅も手段も足りていないのが現状」

リトルワンズの「習い事奨励金」を得て、夢だったというダンス教室に通う女の子

制度が届かない部分を何とかサポートしたいと、リトルワンズは2016年から「習い事奨励金」という独自の奨励金をスタートし、毎年20人の小学生に返済不要の奨励金(5万円)を届けてきました。

「高校生には奨学金や、スポーツが得意であれば特待生の道もある。ところが、小学生にはこういったものは存在しない。さらに、普通の子どもが部活やスポーツをすることには、国の補助はついていない。そこでユニフォーム代や合宿代など、部活や習い事を始めるにあたって必要な金額を助成している。習い事を続けるためにも使えるようにもなっている」

子どもの成長には「体験」が不可欠

「習い事奨励金」を受けた子どもからの感謝の手紙

子どもの成長には、衣食住だけでなく「体験」が非常に大切、と小山さん。

「『子どもの貧困=経済的な貧困』と考える方が多いが、実際は、住居・文化・情報・教育・栄養・就労・安全・精神と、それぞれに不足している。そして、それぞれの体験の機会が少ないと、成長した時にも弊害がでてくる。それぞれの不足に対して少しでもサポートできるように、今できることをお母さんたちと一緒に考えて、作っている」

「周囲の人は文化としてごく普通に行っていることだけど、機会が少なかったり、知らなかったりと、様々な理由で出来ない子どももいる。たとえば、赤ちゃんの頃からプラスチックのフォークやスプーンで食事をしていたので、小学校にあがって初めて木製のお箸を見た子どももいる。家にお風呂がなく、健康ランドや銭湯へ行くことが、お風呂で、体を清潔にすることをイベント事だと思っていた子どももいる」

リトルワンズでは、母子に向けた様々なイベントや講座を毎月実施。こちらは過去に開催したバレンタインのチョコレート作り講座の様子

「文化を知らないと言うのは決して悪いことではなくて、機会がなかっただけのこと。お母さんとしては本当はやってあげたいけれども余裕がなくてできなかったということもあるし、お母さん自体も知らずに成長してきたということもある。衣食住はもちろんだが、子どもの将来の備えとして『体験の格差』を埋めていくことができれば」

住まい探しをサポート、「人生の基盤づくり」を手助けする

クリスマス会での1枚。サンタクロースに大喜びの子どもたち

リトルワンズでは、母子家庭の子どもたちの「体験の格差」を埋めるために、毎月BBQや社会見学、旅行など母子で楽しめるイベントを開催しているほか、母子家庭の要望にあわせて無料で物件を探し、マッチングする「住まい事業」も6年前から行っています。

「シングルママは、家賃や保証人の問題から、部屋を借りるハードルが高くなる。保証人の代わりに保証会社をつけることもできるが、それも高額。働きながら子育てをする必要があるので、保育園や学校、働く場所が近くに無いと物件として成立せず、このような条件に合った部屋を探すのも容易ではない。単に部屋を紹介するだけでなく、仕事や生活の相談なども合わせて提供している」

リトルワンズがサポートした家で暮らす子どもが描いた絵。新しい家で、笑顔でくつろぐお母さんと自分が描かれている

「DV(家庭内暴力)から逃げているお母さんの『このエリアには住むことが難しい』といった要望や『子どもの学校がこの辺りだから、この近くに住みたい』などといったご家庭それぞれのご要望に応えられるような物件を、協力していくださっている不動産ともデータベースを共有し、活用しながら案内している。
東京都の指定居住支援法人にもなっていて、母子家庭に特化した団体は日本唯一と聞いている、始めた当初から比べると国や自治体の認知度も高まり、協力してくださる不動産店も増えてきた」

「家は屋根と寝床だけではなく、生活の基盤、安心の場所でもあり、子どもにとっては成長する場所。家の支援は単なるマッチングだけではなく、お母さんとお子さんの人生の基盤づくりをお手伝いすることだと考えている」

母子家庭の子どもたちに、ピカピカのランドセルを届けるチャリティーキャンペーン

ピカピカのランドセルを背負い、うれしそうな子どもの後ろ姿

チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」(京都)は、リトルワンズと1週間限定でキャンペーンを実施し、オリジナルのチャリティーアイテムを販売します。「JAMMIN×リトルワンズ」コラボアイテムを1アイテム買うごとに700円がチャリティーされ、4月に小学校に入学する母子家庭の子どもたちに、新品のランドセルを届けるための資金になります。

「ランドセルは、子どもたちにとってはただのカバンではなく、新しい人生の象徴であり、学びに行くための必需品。なので、なんとか子どもたちの声に応えようと、数は少ないがこれまで新品の文具、ノートと合わせて新品のランドセルを届けてきた。今後、もっと多くの子どもたちに新品のランドセルと文具を届けたい」(小山さん)

「JAMMIN×リトルワンズ」1週間限定のチャリティーアイテム。写真はコラボデザインのパーカー(7,720円(チャリティー・税込))。他にもベーシックTシャツや七分袖Tシャツ、キッズ用Tシャツ、バッグなども販売中

JAMMINがデザインしたコラボデザインに描かれているのは、生活に必要な衣食住のアイテムや文化的な体験を象徴するアイテム。子どもの成長になくてはならないものの存在を表現しました。

チャリティーアイテムの販売期間は、1月7日〜1月13日までの1週間。チャリティーアイテムは、JAMMINホームページから購入できます。

JAMMINの特集ページでは、リトルワンズの活動について、小山さんへのより詳しいインタビューを掲載中!こちらもあわせてチェックしてみてくださいね。

母子家庭の子どもとお母さんが健やかに過ごせる社会を目指して「人生の基盤」を共に作っていく〜NPO法人リトルワンズ

山本 めぐみ(JAMMIN):
JAMMINの企画・ライティングを担当。JAMMINは「チャリティーをもっと身近に!」をテーマに、毎週NPO/NGOとコラボしたオリジナルのデザインTシャツを作って販売し、売り上げの一部をコラボ先団体へとチャリティーしています。2018年9月で、チャリティー累計額が2,500万円を突破しました!

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