話を聞きたいとお願いして、上手だからと紹介されたのは、千枝子(ちえこ)さん。64歳。昼休みの時間を30分弱いただいた。赤い編み帽子の似合う、よく笑う女性だ。くるりと丸い目が印象的だった。



「がれき処理場で女性が働いている」と聞き、驚きを覚えて訪れた場所は、大船渡市の災害廃棄物二次選別所。大船渡湾に面する赤崎地区に設けられている。外からは青い覆いで仕切られ、はっきりとは見えなかったが、関係者以外立ち入り禁止の入り口を抜けると土色のガレキの小山が見えた。湾に面しているせいか風が強い。ここでは、一次仮置場で大まかに選別された市内の廃棄物のほぼ全てを受け入れ、選別・破砕を行なっている。

働き始めた経緯、仕事場の雰囲気などをたずねると、朗らかに答えてくれ、釣られて笑顔になる。途中から話に加わってくれた竹織(ちおり)さん、理江さんは、震災後に「働かなきゃ」とこの仕事に出会った。不安はあったものの「やってみたら、やれた」。そして、もう1年以上続けられているという。

18ヘクタールの敷地が、木材系の混合物を選別・処理するライン、コンクリートや土砂などの混合物を選別・処理するライン、漁網やタイヤ、衣類、金属くず置き場など、10種類以上のエリアに分けられている。

がれきは最終的に、セメントなどの材料にできるもの、埋め立てなどの復興資材として活用できるもの、焼却処分にするもの、リサイクル処理するものなどに分けられる。大まかな選別は重機などを使って行うが、木材混合物の中に混ざっている小さな金属片を拾い上げるなどの細かな分別は人の手での選別が必要になる。その作業にあたっているのが、彼女たちのように緊急雇用の枠組みで採用された40人。

取材時点で、大船渡市のがれき処理の進捗は5割*を超えているという。このまま順調に進めて、2014年の3月末には全てが終了している予定だ。これは被災地3県全体で平均したがれき処理の進捗、3割強**に比べるといち早い。

「大船渡市のがれき処理が順調に進んでいるのは、太平洋セメントが受け入れ先になってくれたことが大きい」と、本事業を大船渡市から委託されているリマテック株式会社復興本部の紺谷洋之さんは話す。選別・破砕を経てセメント材として活用できるようになった不燃物や可燃物は、タンカーを使って湾をまたいだ先にある太平洋セメントに運ばれる。その量は、多い日で200トンを越えるという***。

「わたしたちの仕事はきれいってほめられたんですよ」と千枝子さん。岩手県の廃棄物対策課が現場視察に来た際のことらしい。「いやぁ、わたしなんか次の(世代の)子たちのためにもキレイにしないとって気持ちもあるよ」と千枝子さんが会話の中で言った。顔を見ると笑顔。目の奥に力強さを垣間見た気もする。

お昼休みが終わりに近づくと、安全ヘルメットと粉塵よけのマスクを身につけた。安全ヘルメットの下から赤い編み帽子、黄緑の作業ベストから出た花柄の袖が、アンバランスにも見え、力強く、可愛らしい。「あとで現場をのぞきに来てください」と笑うと作業場に戻っていった。


写真・文=岐部淳一郎


この記事は「東北復興新聞」から転載しました。


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