「海洋プラスチックごみ問題」が世界規模で問題になる中、日本の飲料メーカーも新たな解決策を続々と打ち出した。日本コカ・コーラが2030年までに容器原料の50%をリサイクル可能な素材にすると発表したのに続き、サントリーホールディングスも同年までに容器を100%再生素材で作る方針を打ち出した。一方、ペットボトルではなく、「マイボトル」の使用を主張するNGO/NPOも多く、課題解決は容易ではなさそうだ。(オルタナS編集長=池田 真隆、オルタナ編集部=堀 理雄)

廃プラ問題は環境相の「一丁目一番地」

ペットボトルやレジ袋、ストローなど「海洋プラスチックごみ問題」は6月に大阪で開くG20(金融・世界経済に関する首脳会合)でも議題に上がる予定で、原田義昭環境相は2月にレジ袋の有料化についても言及した。「廃プラ問題は原田環境相にとって一丁目一番地」(環境省幹部)という位置づけだ。

ペットボトルについても対策は進む。米コカ・コーラは2018年1月に「廃棄物ゼロの社会を目指したグローバルビジョン」を発表。これを受けて日本コカ・コーラも「容器の2030年ビジョン」を策定した。

容器の2030年ビジョンでは、「設計」「回収」「パートナー」の3点で目標を設定

その内容は、2030年までにペットボトル製品の容器原料の50%をリサイクル材にすることを目指すものだ。回収したペットボトルをリサイクル材に加工するインフラの整備を政府や自治体などと組み、進めていく。

日本コカは5月22日、日本財団の協力を受けて、河川に流出したプラスチックの流出経路を調べる調査を全国8カ所で行うと発表した。G20が開催される6月をメドに中間報告をまとめ、年内に最終レポートとして公表する予定だ。

アサヒ飲料は2030年までに、ペットボトル容器の60%にリサイクル材と植物由来の素材を使うことを目指している。プラスチック製容器の削減については、2020年に2004年比で25%削減が目標だ。

サントリーは100%再生素材、NGOも一定評価

サントリーホールディングスも2030年までに、すべてのペットボトルを再生するシステムを構築する方針を明らかにした。ペットボトルには、再生樹脂を6~7割使い、不足分は再生可能な植物由来の樹脂で賄う方針だ。このシステムを確立するために、500億円規模の投資を同社や関係企業と行う。

製品の回収について、広報部の長門祐也氏は、「省庁や自治体、業界全体で連携して仕組みを構築していく」と話した。

一方、環境NGOの間では、ペットボトルの使用は減らし、マイボトルを増やそうと主張する団体が多い。グリーンピース・ジャパン(GPJ)もその一つで、マイボトル給水機の設置を増やすキャンペーンを展開中だ。

GPJの大舘弘昌プラスチック問題プロジェクトリーダーは、今回明らかになったサントリーの取り組みについて、「2030年までの再生ペット樹脂比率など日本の他社と比較して高い目標を設定しており、一定の評価はできる」とコメントした。

さらに「しかしながら、マイボトル給水スポットの設置や繰り返し使用できる包装容器など、そもそも使い捨てプラスチックを使わなくて済むリユースへの新しい取り組みも併せて進めてほしい。大手飲料会社の社会的責任として、循環型経済に向けたより先進的な投資や、他企業との協力体制をつくることも期待したい」と話す。

サントリーは、マツの間伐材やサトウキビの残りカスなど植物由来の樹脂も活用する方針だ。それに対して大舘氏は「『植物由来』についても、持続可能性を確保することが非常に重要。今回の報道だけでは分からない部分もあるので、引き続き注目していきたい」と指摘した。

ペットボトルを使わず、マイボトルを持つことを推奨するNGOや市民団体の動きについて、サントリーは、「ペットボトルの代替容器の研究も合わせて行い、検討していきたい」(広報部・長門氏)。

日本コカの宍倉麻矢コーポレート&サステナビリティコミュニケーション担当は「清涼飲料業界のプラスチック資源循環宣言に準じた取り組みを推進している」と話している。

同宣言は、一般社団法人全国清涼飲料連合会(東京・千代田)が2018年11月に発表したもの。消費者や政府、自治体と連携して2030年度までにペットボトルの100%有効利用を目指すことをまとめたものだが、この宣言では、ペットボトルを2020年までに2004年比で25%削減するという方針を定めている。

アサヒ飲料のコーポレートコミュニケーション部の松沼彩子氏は、「プラスチック以外の環境に配慮した素材でつくる研究を進めている」とした。

【編集部おすすめの最新ニュースやイベント情報などをLINEでお届け!】
友だち追加