「障がいがあっても、自分の可能性を信じられる社会をつくりたい」。東京都東村山市にある本革製品の製造・販売を行うUNROOFでは、精神疾患・発達障がいを持つ人を正社員として採用し、健常者と同等の給与水準で雇用している。「障害者枠」で採用されると、多くが単純作業に従事し、給与も健常者と比べると著しく低い。障がい者雇用に関して問題意識を持った車椅子ユーザーがこの会社の代表を務めている。(寄稿:ボーダレス・ジャパン=日野 美久)
「淡々とした業務をする枠だったら採用できる」――これはADHD(注意欠陥・多動性障がい)を抱える坂本実萌さんが障害者枠での採用面接を受けたときに言われ続けた言葉だ。
「とにかく、パソコンの簡単な計算の入力とか事務の仕事を強く勧められました。おそらく向こうも、私に任せられるのか不安に思っていたのかもしれません」と当時を振り返る。
現在日本には約41万人の精神障がい者がいる(65歳未満の精神障害者手帳所持者数『障害者白書』を参照)。このうち就業人口の割合は全体の約15%。健常者と比較すると約50%も低い数値だ。
就業できたとしても、「障害者枠」という雇用形態でデータ入力や物品の梱包などの単純労働を行うことが多いため、障害者枠の給与水準は健常者と比較して著しく低く、不安定な雇用が多いのが現状である。
■障がい者にも、働き方改革を
このような障がい者の就労に対して問題提起をする会社がある。本革製品の製造・販売を行うUNROOF(東京・東村山)だ。「障がいがあっても、自分の可能性を信じられる社会をつくりたい」そんな思いから、共同経営者である高橋亮彦さんと中富紗穂さんが二人で立ち上げた。
同社は2017年8月の自社工場設立以来、精神疾患・発達障がいを持つ人を正社員として採用し、健常者と同等の給与水準で雇用してきた。現在は12人中4人がADHDやアスペルガーなど、精神疾患や発達障がいを抱えている。
「障がい者と一言でいっても、スキルもモチベーションも人それぞれ。ひとりひとりに向き合いながら、各人の特性を生かしたマネジメントができれば、健常者と同等の戦力になる可能性はある。それなのに、現在の障がい者にはその可能性を発揮するチャンスがない」と語るのは、UNROOF代表の高橋さん。自身も車椅子ユーザーの「障がい者」だ。
同社の工場では社員の「できる」「できない」を決めつけず、一人ひとりと面談をしたうえで本人のやりたいことや特性を見極め、仕事を提案する。その仕事に挑戦したうえでどうしてもできないということが見つかれば、できる方法を本人と周りのメンバーで考える。それでもうまくいく方法が見つからなければ、他の仕事をやってみる。このサイクルを繰り返すことで、健常者と変わらない働き方を実践できる職場環境をつくっている。
■ボーダーレスにこだわった商品デザイン
そんなUNROOFは今月クラウドファンディングを開始した。資金集めが目的ではなく、こうした現状をより多くの方に知ってもらいたい、そしてその解決を目指すUNROOFを、応援者のみなさんと共に創っていきたいという思いからだ。
資金提供者へのリターンには同社の革職人たちが作った4種類の革小物を提供。「ボーダーレス」をテーマに、メンズとレディースを分けない製品ラインや左利き仕様の財布など細部にこだわったデザインの商品が並ぶ。
「これからUNROOFは、革小物の製造・販売事業を成長させることで、より多くの精神障がい者・発達障がい者の方が希望をもって働ける場をつくっていきます。そうして、UNROOFに込めた、『誰かに作られた枠(天井)にとらわれないで生きる社会の実現』を目指していきます」(中富)
UNROOFのクラウドファンディングは7/19(金)23:59まで。
https://camp-fire.jp/projects/view/152363
<問い合わせ先>
UNROOF株式会社
住所:東京都東村山市栄町3-3-2ナズ久米川レックス1F
TEL:042-313-0319
E-mail:nakatomi@borderless-japan.com
URL:https://camp-fire.jp/inquiries
担当:中富紗穂