沖縄固有の文化や歴史、伝統を伝える人々が少なくなってきているなかで、映像アーカイブの価値が高まっている。しかし、権利などの問題で、映像を一般公開用として残すことは難しいのが実情だ。そこで、一般家庭に眠っているフィルムのデータを収集して、利活用できるようにしたサイトがある。(武蔵大学松本ゼミ支局=細倉舞・武蔵大学社会学部メディア社会学科2年)

サイトの名称は、「沖縄アーカイブ研究所」。一般家庭に眠っている8ミリフィルムを収集し、デジタル化による利活用を行なっている。

インタビューを受ける真喜屋力さん

同サイトの運営を行うのは、シネマ沖縄。文化活性化・創造発信支援事業の一環として、沖縄県と(公財)沖縄県文化振興会から支援を受け運営している。

サイトで公開されている映像は、もともと8ミリフィルムで撮られたものだ。フィルムは、新聞やテレビなどで呼びかけをして、一般から集めた。フィルムの提供者にはデジタル化したものがプレゼントされる仕組み。

映像アーカイブは、誰もがどこからでもアクセスできることが重要だと真喜屋さんは考える。視聴者から映像に関する情報が提供されると、これまで分からなかった背景を知ることができ、映像の新たな価値が生まれる。

デジタルアーカイブは、リンクフリーで埋め込みをすることが可能になる。真喜屋さんは、「色々な人に映像を使ってなにかしてみたいと思ってほしい。映像アーカイブを沖縄でつくることによって、つくる人が育つ」と話す。

つくっていく人は、実際に当事者に話を聞くことができ、一次資料に触れることができる。そうした作業を通して、沖縄の歴史や文化を勉強することができる。すなわちアーカイブを育てるということは、アーカイブをつくる人が育つということにつながるのだ。

8ミリフィルムカメラ

沖縄アーカイブ研究所では、ネット公開だけでなくイベントも開催している。アーカイブに蓄積された映像の上映会を各地域で開いている。上映会に来るのは、30代や40代、高齢者などが多くネットを見ない世代であるため、上映会はより多くの人々に知ってもらう良い機会となっている。

地域の人から色々な話も聞けるため、それをきっかけに新たなネットワークを広げている。ミュージシャンとコラボして映像を流していくこともある。見る人が親しんで楽しんでもらうことにより、その映像は広がっていき残されていく。真喜屋さんは楽しんでもらうことこそが重要だと語る。

沖縄アーカイブ研究所では、ネットに公開されている映像があと2本で100本を超える(取材当時)。今後は、ネット公開や上映会だけでなく、映像をもとに写真にしてパネル展を開きたいという。真喜屋さんは、「考えられる限りのことをやって、使ってもらえる文化資源として残していきたい」と話す。

沖縄アーカイブ研究所

【編集部おすすめの最新ニュースやイベント情報などをLINEでお届け!】
友だち追加