うさぎといえば「かわいい」「フワフワしていて愛らしい」、真っ先にそんなイメージが湧いてくるのではないかと思います。しかし、そんなイメージの裏で「イメージと違った」「もう飼えない」と捨てられるうさぎがいることをご存知でしょうか。学校教育の現場では、適正でない飼育環境の下で重い病気になったり命を落としたりするうさぎがいるといいます。捨てられたうさぎを保護する団体に話を聞きました。(JAMMIN=山本 めぐみ)
「かわいい」だけでは飼えないうさぎ
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そう話すのは、大阪を拠点に活動する一般社団法人「LIBERTY(リバティ)」代表の藤田敦子(ふじた・あつこ)さん(51)。リバティでは粗末に扱われる命がなくなるよう啓発活動を行いながら、うさぎの保護・里親探しにも力を入れています。
「小さな命が、命として扱われていない現実がある」と藤田さん。「うさぎは死んだ状態で収容されることも多く、犬猫のように殺処分や保護の問題にそもそも出てこないという特徴があります。私は犬猫の保護活動にも携わってきましたが、うさぎの保護活動はとても難しいと感じています」とうさぎ保護の難しさを指摘します。
学校飼育崩壊も課題の一つ
うさぎを取り巻く課題としてもう一つあるのが、学校飼育の崩壊だといいます。「幼稚園や小学校で命の尊さや心の教育を目的としてうさぎなどの小動物が飼育されることがありますが、ずさんな管理と飼育により大量繁殖して飼育しきれずに死んでしまったり、骨折や病気が放置されて亡くなってしまったりといったケースが後を絶たない」と藤田さん。
「うさぎは特に、繁殖力がとても強い生き物です。メスは生まれて3〜4カ月で子どもを産める状態になり、また決まった発情期がなくいつでも妊娠することができます。さらに妊娠期間はたった1ヵ月で、年間で8回は出産が可能といわれています。種類にもよりますが、一回で6〜7匹出産するうさぎもいるのであっという間に数が増えてしまいます。オスとメスを同じ小屋に入れておくと、短期間でものすごい数になります。過去にあったケースでは、一つの小屋で200匹ほどになった例もあります。オスとメスを分けて小屋に入れることはもちろん、避妊去勢手術も必要です」
「屋外でほぼ放置のような状態でいとも簡単に飼うことができるようなイメージがあるかもしれませんが、うさぎは本来寒さや暑さにも弱い生き物。学校の先生たちにも知識がなく、適切なエサや水も与えられず、不幸なうさぎが生まれてしまう現実があります」
人間が抱く勝手なイメージと現実の狭間で捨てられるうさぎたち
「かわいいというイメージで飼ったのはいいけれど、実際に飼ってみるとイメージとのギャップに驚いて『こういう生き物とは思わなかった』と相談を受けることも少なくない」と藤田さん。
「うさぎはいろんなものを噛む生き物で、家の中で飼っていると電気コードや壁紙、カーテンなどを噛んでしまうし、飼い主さんとの触れ合いも簡単ではありません。また暑さに弱く熱中症で亡くなるケースもあるので、エアコンは年中必須。診てくれる動物病院も多くなく、決して簡単に飼うことができる生き物ではありません」
「正しい飼育方法を知らずに飼ってしまうことを証明するかのように、1歳ぐらいまでに捨てられるうさぎがとても多いです。『言うことを聞かないから』『懐かないから』『噛むから』と捨てられてしまう。まずはうさぎの生態や正しい飼い方を知ることが大切です」
干支の卯年には毎年うさぎブームが起こってたくさんのうさぎが飼われ、翌年には捨てられるといいます。
「前回は私のところにも50匹を超える保護依頼がありました。次の卯年までに、一人でも多くの人に理解を深めて欲しいと思っています」
うさぎの寿命は10年、正しい知識で、最期まで責任を持った飼育を
「うさぎは犬や猫のように積極的にじゃれたり簡単に抱っこをすることはできませんが、撫でたりおやつをあげたりとコミュニケーションをとることはできます」と藤田さん。聞くとうさぎは聴覚が優れており、慣れてくると飼い主の声には敏感に反応するのだといいます。
うさぎの主食は「チモシー」「ティモシー」と呼ばれる干し草。LIBERTYでは、保護しているうさぎたちが新しい里親の元に行った後も慣れないエサに困らないよう、いろんな種類の干し草を与えています。「13匹いるので、小さな衣装ケース一箱分の干し草は1日であっという間になくなる」と藤田さん。ボランティアさんの協力も得ながら、毎日エサやりはもちろん、ケージの掃除や運動を欠かしません。
うさぎは暑さや寒さに弱いため年中エアコンが必須なほか、持病を抱えているうさぎの医療費なども必要で保護は決して楽ではないといいますが、小さな命が守られていない現実に対して「何かおかしいのではないか」という気持ちが、藤田さんを活動へと駆り立てているといいます。
譲渡については、暑さや寒さに弱いため野外での譲渡会は行わず、室内の譲渡会や直接来訪した里親希望者と話し合いを重ね、家族の意向や飼育環境を確認した上で、うさぎの健康管理や飼育に関しての譲渡条件を満たした場合にのみ、1〜2ヶ月のトライアル期間を経たのち、正式譲渡しています。
「うさぎは10年ほど生きます。本当に最期までうさぎのお世話をしてくださるのか、安易に渡すことはしたくないと思っていて、譲渡の際の条件も多数設けています」
犬猫の保護活動には追いついていない、うさぎ保護の難しさ
「保護犬猫の問題と比較して、保護うさぎの問題はまだまだ市民権を得ておらず、そこが大きな課題」と藤田さん。
「最近は保護された犬猫を迎え入れる里親さんも増えていますが、うさぎはここの部分もまだまだと感じています。犬猫の場合は法律や捨てられた際の保護のためのルールなどが整備されてきているが、うさぎはまだこういった部分も確立していません」
「この度、6月に改正動物愛護法が成立し、これまでより罰則が厳しくなりますが、柱となる改正は主に犬猫だけにとどまり、うさぎの小さな命が守られていないままです。まずは犬猫のことが進まないとうさぎのことも進んでいきませんが、犬猫の法整備もまだまだの中、目の前でいとも簡単に売買される、そして捨てられる命に向き合っていかなければ、不幸なうさぎは増える一方だと感じています。一般の方にはもちろん、うさぎを飼っている方、これから飼おうとしている方にも、引き続き正しい飼育とうさぎの問題を知ってもらえるよう啓発活動をしていきたいと思っています」
うさぎの保護活動を応援できるチャリティーキャンペーン
チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」(京都)は、LIBERTYと1週間限定でキャンペーンを実施し、オリジナルのチャリティーアイテムを販売します。「JAMMIN×LIBERTY」コラボアイテムを1アイテム買うごとに700円がチャリティーされ、LIBERTYが保護したうさぎが新たな里親の元で幸せを見つけるまで、飼育に必要なエサ代や医療費などの資金となります。
JAMMINがデザインしたコラボデザインに描かれているのは、力強く大地を駆けるうさぎの姿。うさぎが幸せに生きる命を全うしてほしいという願いが込められています。
チャリティーアイテムの販売期間は、6月24日~6月30日の1週間。チャリティーアイテムは、JAMMINホームページから購入できます。
JAMMINの特集ページでは、インタビュー全文を掲載中!こちらもあわせてチェックしてみてくださいね。
・捨てうさぎ、学校飼育崩壊…。「かわいい」だけでは飼えないうさぎのこと、正しく知って〜一般社団法人リバティ
山本 めぐみ(JAMMIN):
JAMMINの企画・ライティングを担当。JAMMINは「チャリティーをもっと身近に!」をテーマに、毎週NPO/NGOとコラボしたオリジナルのデザインTシャツを作って販売し、売り上げの一部をコラボ先団体へとチャリティーしている京都の小さな会社です。創業6年目を迎え、チャリティー総額は3,000万円を突破しました。
【JAMMIN】
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