米CNBCは、北極圏における大規模な森林火災の発生によって、今年6月だけで、二酸化炭素の排出量がスウェーデン全体で1年間に排出される量を上回ったと報じた。森林火災は北極圏だけでなくアマゾンでも深刻化しており、大気汚染や地球温暖化の加速を専門家は危惧している。(寺町 幸枝)
きれいな空気が吸えない恐怖
NASA宇宙飛行センターのリズ・ホイ調査官によると、ロシア(シベリア)、アラスカ、グリーンランド、カナダにおける火災は、6月単体だけで5000万トンの二酸化炭素を排出したという。この量はスウェーデンの1年間の排出量とほぼ同量で、過去6月の平均排出量の6倍以上、7月は7900万トンに達した。(参考サイト:https://earthobservatory.nasa.gov/images/145380/arctic-fires-fill-the-skies-with-soot)
ホイ調査官は、衛星から映し出される雲の動きを観察する専門家で、「今年は、信じられない規模での火災が発生し、その煙は何千マイルの規模で北極圏全体に大気汚染を起こしている」と話す。
過去3ヶ月で240万エーカー(東京ドーム20万個分)が消失したアラスカでは、森林火災の制圧と保護に対してすでに1億5千万ドル(約158億円)以上の資金を投じた。
アラスカのフェアバンク市では、25日間断続的に大気が煙に包まれたため、市民がきれいな空気を吸うことができるように、地域にある複数の臨時病院を開設した。多くの市民も、夏の暑い時期にも関わらず自宅待機を強いられた。
シベリアの森林火災も深刻で、ロシアでは700万エーカー(東京ドーム60万個分以上)の広さが消失。プーチン大統領は消火活動に軍を投入した。
世界規模で起きる森林火災
一方、南米アマゾン熱帯雨林でも、大規模な森林火災が起きている。世界で最も広大な熱帯雨林では、焼き畑農業などで人工的に起こされた火災により消失の危機が迫っている。米ワシントンポスト紙は、アマゾン地域での今年の森林火災は、例年より80%も増加していると報じている。
ブラジルの国立宇宙研究所(INPE)によると、アマゾン熱帯雨林の森林火災発生件数は、2013年の倍である75,000回に達したという。ブラジルだけでなく、周辺のボリビアやペルー、ベネズエラなど南米各国でも森林火災が例年よりも頻繁に起きている。
英国WIREDによると、欧州中期天気予報センター(ECMFW)は、8月20日までの20日間のCO2排出量は、約2300万トンに及ぶと算出したという。英国のエネルギー業界が排出する1年間(2018年)のCO2排出量が9800万トンであり、その量は異常だ。
移動する雲の影響は計り知れない
世界気象機関は、こうした森林火災により発生した汚染された雲は、EU全体よりも大きく拡大し、シベリアから北極圏へ移動している。そのためアラスカは、昨年のカリフォルニア州で起きた大規模な山火事により、さらに上回るダメージを受ける可能性があると予測している。
火災の影響は、北極圏の気温上昇を促し、他の全世界エリアの2倍の高さだという。国土の82%が氷に包まれているグリーンランドでは、1日で110億トンという大量の氷が溶け始め、0.1ミリ海面の上昇が起きた。10日で1cm規模の海面上昇は異常であり、グリーンランドは今40年前の6倍の速さで氷が溶けている。
ブラジル北部にあるアマゾン熱帯雨林での火災は、3200キロメートルも離れる首都サンパウロまで到着し、黒い煙が一時町を覆うという現象を引き起こしている。沖縄から北海道までの約1.5倍の距離だ。
さらに、8月19日にはスペインのカナリア諸島にあるグランドカナリア島でも大規模な山火事が発生した。山岳地帯の美しい景色が有名な同地域では、多くの観光客な夏休みで訪れていたため、約1万人が避難を余儀なくされた。
消防士六百人以上が投入されて火災の鎮圧にあたり、週末を徹しての消火活動で、ほぼ火災は食い止められたとAFPは報じている。なおこの火災によって、2週間の間で3万エーカー(東京ドーム約2600個分)が消失した。
[showwhatsnew]