東急はこのほど、鉄道会社として日本で初めて、「社会実装」に特化したオープンイノベーション施設「Shibuya Open Innovation Lab(SOIL)」を開設した。SOILは招待会員制の施設。スタートアップや大手企業、投資家、メディア、官公庁などと連携して、革新的な事業を社会へ広めていく。(オルタナS編集長=池田 真隆)

SOILの責任者である加藤由将・東急フューチャー・デザイン・ラボ課長補佐

SOILの特徴は「社会実装」にフォーカスしているところだ。「0から1」の事業を生み出すのではなく、鉄道や不動産など様々な事業領域で顧客接点を持つ東急の事業特性を生かして、まだ社会に普及していない先端技術を「1からN」のように広めていくことに特化する。

同施設には日本経済新聞社が活動拠点を開設しており、取材拠点として利用するほか、イベントを通じてグローバルなイノベーション情報の発信を行う。

同施設を利用できるのは、東急が依頼した招待会員のみ。SOILの趣旨に合致したベンチャーキャピタルやメディア関係者、大企業の新規事業開発担当者などが個人で登録している。高い実行能力を持つ会員とのネットワークから、街づくりにイノベーションを起こす都市機能の一つになることを目指す。

打ち合わせスペースとして無償利用できるのは招待会員だけだが、招待会員ではなくてもSOILのコンセプトに合っているイベントであれれば、イベントスペースとして利用できる。利用料金は4時間30万円から。

イベントスペースとしては最大で100人収容可能

SOILの責任者を務める加藤・東急フューチャー・デザイン・ラボ 課長補佐は、SOILをつくった理由をこう話す。「中国やインドなどは積極的に産業育成を行いGDP成長率を上げ続ける中、日本のGDPは伸び悩んでおり、新産業育成は国家的に急務となっている。渋谷の再開発に合わせたエコシステムを形成し、スタートアップの成長支援を通じて産業・経済の新陳代謝を狙う」。

渋谷を選んだ理由は、「イノベーションはヒト・モノ・カネ・情報の集積がカギ。この意味では多様性・寛容性・猥雑性・流動性に富んだ都市空間である渋谷でやらない理由がない」と加藤氏は言い切る。

中長期的なKPIは設定していないと言う。「イノベーションを生み出すためにビジネスマッチングのトライアルを繰り返している段階なので、不確実性が高い。そのため、現状でKPIを設定することに意味はない」と考えている。理想の状態としては、「招待会員が自由にこの場を利用して社会実装に取り組んでいる状態」とする。

SOIL


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