近年、地方で人口減少や過疎化が進む中、それらに歯止めをかけるべく図書館が注目されている。岡山県瀬戸内市にある瀬戸内市民図書館「もみわ広場」である。「もみわ」とは、もちより・みつけ・わけあう広場ということを基本理念として、それぞれの頭文字をとって名付けられた図書館である。(武蔵大学社会学部松本ゼミ支局=永嶋 有芽・武蔵大学社会学部メディア社会学科3年)

「もみわ広場」館長村上岳さん

瀬戸内市には牛窓図書館、長船図書館、そしてもみわ広場という3館の図書館がある。平成30年3月末現在で、この3館での蔵書数の合計は147,460冊であり、そのうちもみわ広場には109,348冊がある。もみわ広場の来館者数は平成30年では約17万人で、子どもから大人まで幅広い年齢層の方が利用している。

もみわ広場入口の表示とロゴマーク

村上さんやもみわ広場前館長の嶋田さんは、市民から整備された図書館が欲しいという要望を受け、もみわ広場の設立に携わってきた。さらに開館に向けてより多くの市民の声を取り入れるために、「図書館未来ミーティング」という誰でも参加することができるオープンな市民ワークショップを開館までに11回、開館後に1回開催した。

もみわ広場が設立された場所には以前郷土資料館があったことからその後継施設としての役割を果たすために郷土資料の保存の仕方にも工夫がなされている。

一般的に考えられる郷土資料の保存方法は、図書館に併設させる形で郷土資料のコーナーや部屋を用意することであろう。しかし、もみわ広場では図書館内自体に、つまり本棚や読書ができるスペースに隣接する形で郷土資料の展示を行っている。

ガラス張りの床の一部に展示物を入れるといったユニークな展示も行っている。こういった展示方法をとった理由として、郷土資料に興味がない人でも図書館を通じて郷土資料と接してもらい、興味を持ってもらうという狙いがあると村上さんは語る。

もみわ広場内装

もみわ広場の特徴的な活動はまだある。その1つが「せとうちまーる号」という移動図書館である。

この「せとうちまーる号」は市内の高齢者など図書館に行きにくい人が集まる地域や幼稚園や保育園などの児童施設などを対象とした14か所に車を走らせている。

先に述べた郷土資料展示の一環として、もみわ広場の館内には「喜之助ギャラリー」という日本の人形芝居を盛り上げた一人である人形師竹田喜之助の功績を称え、彼の製作した人形「通称喜之助人形」を展示している場所がある。

もみわ広場の一角にある喜之助ギャラリー

デジタルアーカイブ活動も行う。もみわ広場では「みんなでつくるせとうちデジタルフォトマップ」や「せとうちふるさとアーカイブ」を写真が好きな人や瀬戸内市の移り行く風景や景観を残したいという人などを中心に協力を仰ぎ取り組んでいる。

同じくデジタル関連の取り組みとして、もみわ広場の2階にはeラーニングを行えるスペースがある。そこでは放送大学と連携しながら有料のオンラインを利用することができ、さらに公開講座も年2回行っている。




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