日本の就労人口の約50人に1人が外国人であり、新たな就労資格「特定技能」によって、その割合はさらに高まることが予測される。日本に観光に来る訪日外国人も含めて、外国人との共生社会へのカギは「ローカルに落とし込めるか」だ。この領域で挑戦を続けるミレニアル世代の若手起業家に聞いた。(寄稿:武井朋美)

対談したone visa社長の岡村アルベルトさん(左)とMATCHA社長の青木優さん

「新たな就労資格“特定技能”で外国人との共生社会が加速。ミレニアル世代CEOがみる日本の姿」

日本の就労人口の50人に1人は外国籍ー。
あなたはそう聞いて、多いと感じますか?まだまだ少ないと感じますか?

昨年度末、日本に中長期滞在している外国人の数は273万1,093人※1となり、過去最高となりました。このうち、就労者は概ね半数の約146万人。つまり就労人口の50人に1人は外国籍の方であるという状況が読み取れます。

一方で、昨年度の訪日外国人客数は約3,100万人。今年度にはさらに大きな数字となることが予想されています。

今回は「世界から国境をなくす」というビジョンのもと、外国籍人材の来日から定住までの公正な環境をサポートするone visa(東京・台東)と、設立から6周年をむかえ、様々な日本の企業・自治体と連携し世界最大の訪日観光メディアを目指すMATCHA(東京・台東)の社長に聞きました。
*この記事は後編になります。前編はこちら

訪問をきっかけに、その土地と恋に落ちる。「移住したい」と思われる国の共通点とは

訪日外国人からの「日本に来てよかった、また行きたい」という声はどのようなシーンで生まれることが多いのでしょうか。また訪問をきっかけに、移住したいと思われるのはどんな国なのでしょう。

MATCHA社長の青木さん

青木「自分も旅をしていて感じたのは、期待を大きく超える体験をすると、その土地のポジティブな印象がずっと残りますよね。また、その土地にいて自分が自分らしくあれるか、仕事があるかなど、リアルに移住した後のことが想像できるかはポイントだと思います」

岡村「自分がそこにいて違和感がないか、移住後を想像できるかできないか、は大きなポイントとして深く同意です。また母国に帰った時に、周囲に思わず教えたくなるエピソードがあるかないか、も同じくポイントだと思います。僕もまた幼少期にそうだったのですが、日本に行くモチベーションとして綺麗な観光名所やおいしいご飯、アニメや漫画などのカルチャーに期待して行くと思うんです。一方で、そこにいる現地の人=日本人に対しては、丁寧だけど、シャイであまりオープンな人々ではないというイメージを抱いている、要は期待値が低い状態かと思うのですが、それを裏切る瞬間が少しでもあると、それは期待を大きく超える体験になるのでしょうね」

それでは外国籍の方々が日本に移住したいという想いが芽生えた後、来日・定住までには仕組み上どんなハードルがあるのでしょうか。

岡村「訪問したことがきっかけで日本に定住したい気持ちが芽生えた場合でも、ビザ(在留資格)の仕組み上の要因から、実現できない外国人も実際には多いのが現状です」

日本への移住を目指し、日本語を勉強するカンボジアの学生(one visa提供)

青木「MATCHAにも外国籍のスタッフは多数在籍しています。就労ビザの取得と考えると、近年は個人にスキルがあればビザは比較的とれるようなイメージなのですが、実際にはどうなのでしょうか」

岡村「仰るように職務経験や学歴はベースとして、日本の受け入れ企業側が言語の重要性よりもスキルベースになってきている傾向はあると思います。しかし、ビザ(在留資格)取得の面では、本人のスキルや背景ではなく、国籍に依存してハードルが全然違うというのが悲しいですが、事実です。また来日後も、コミュニティに溶け込むことができるかという課題、外の世界と関わっていくためには言語取得の課題、日本のインフラ制度上の課題、つまり母国と変わらない環境を用意できるかという点が課題になっているので、one visaはその末端までサポートできるといいなと思っています」

岡村アルベルト

青木「気持ちとしては企業側であれ、地域住民であれ、外国人を迎え入れたい人は日本にも増えてきていると思うので、課題を一つずつ解決できるインバウンドのプロデューサー的な存在がそれぞれのフィールドに必要ですね」

海外にルーツを持ち、国籍に関わらず多様な人々の共生社会に向けて課題を捉える二社。奥底には「日本が好き」だという気持ちがあるからこそ課題と向き合いたいと繰り返す、ミレニアル世代の経営者2名の今後に、ますます注目が高まります。

  
※1 出典:法務省「平成30年末現在における在留外国人数について」

岡村 アルベルト 株式会社one visa 代表取締役
1991年ペルー生まれ、大阪育ち。日本とペルーのハーフとして生まれ、6歳で来日。幼少期に友人が強制送還された経験からビザに関する問題を解決すると志す。 大学卒業後、東京入国管理局の窓口で現場責任者を務め、年間2万件を超えるビザ発給に携わる。2015年に起業し、2017年6月にビザ取得サービスであるone visaをリリース。

青木 優 株式会社MATCHA 代表取締役社長
1989年東京都生まれ。明治大学国際日本学部卒。大学在学中に1年間休学し、世界一周の旅に出る。2012年ドーハ国際ブックフェアーの運営に従事。大学卒業後、デジタルエージェンシー augment5 Inc.に所属。2013年12月株式会社MATCHAを設立し、代表取締役社長に就任。




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