サーキュラーエコノミー研究家という肩書で活動する一人の若者がいる。オランダ・アムステルダム在住の安居昭博さん(31)だ。オランダに視察に来る日本企業の受け入れなどを行い、サーキュラーエコノミーを推進する。(オルタナS編集長・池田 真隆)

サーキュラーエコノミー研究家 安居 昭博さん(31)

オランダ政府は2016年9月、2050年までに国全体でサーキュラーエコノミーに移行する方針を発表したが、首都アムステルダムはその1年前から動いていた。

アムステルダムは2015年に、市主導で世界で初めて「街」としての大規模なサーキュラーエコノミーへの移行調査を実施した。

政府の掲げた目標に向けた段階的な数値目標として、2025年までに65%の一般家庭ゴミをリサイクルまたはリユースに、2030年までに一次原材料資源の50%削減を目指している。まさにいま、アムステルダムは廃棄した資源を有効活用しながら暮らす「実験都市」に変わりつつあるのだ。

サーキュラーエコノミーの先進都市アムステルダム

昨年の5月、この実験都市に一人の日本人の若者が移住した。安居昭博さん(31)だ。もともとフリーランスのフォトグラファーとして、ドイツやフランス、デンマークなどで循環経済やサステナビリティを軸に取材し、その様子を動画にまとめて、自身のサイトで紹介する活動を行っていた。映像はANA国際線でも放映されたことがある。

取材で培った知見を生かして、いまでは、サーキュラーエコノミーに関心のある日本企業の視察も受け入れている。最近では、ほぼ毎週、日本からビジネスパーソンが来るという。

日中はオランダで有名なサーキュラーエコノミー先進企業を訪問し、夜には食事をしながらディスカッションを交わす。オランダに住み1年未満だが、これまでに約50社の受け入れをコーディネートしてきた。

インタビューした映像を編集して、自身のサイトなどに載せている

昨年12月には、日本でも本格的にサーキュラーエコノミーを推進していくプラットフォームを立ち上げた。その名称 は、「Circular Initiatives & Partners」。運営は、安居さんとサステナビリティにも力を入れるクリエイティブエージェンシーRIDE MEDIA & DESIGN社(東京・目黒)が協働で行う。

このプラットフォームではアムステルダムでの視察イベントやオンライン講習会などを開かれている。視察参加企業との日本独自のサーキュラーエコノミー型ビジネスモデルの創出や社外ネットワークの構築、欧州企業との交流を進めている。

安居さんは、「欧州で起きていることをただ真似するのではなく、日本の風土に合った独自のモデルを共創し、逆に日本から世界に好事例を発信していきたい」と話す。

きっかけはビュッフェから出る大量のフードロス

安居さんおすすめ オランダのサーキュラーエコノミー先進事例①

そもそも安居さんがサーキュラーエコノミーに関心を持ったきっかけは、大学時代のアルバイトにあるという。働いていたホテルのビュッフェレストランでは、毎朝、大量に食材が捨てられており、問題意識が芽生えた。

ホームレス状態の人や視覚障がいのある人を支援するボランティアにも積極的に参加してきたこともあり、社会性は生まれつき高かった。大学に入ると、ドイツやイタリアで農家の手伝いをしながら泊めてもらうファームステイを経験した。政治やエネルギーについてどのような考えを持っているのか、ホストファミリーや現地の友人らと多いに語り合ったという。

しかし、日本に帰国してから違和感を覚えた。欧州では当たり前のように話題になっていた政治やエネルギーなどの話をする機会はほとんどなかった。

 

 

 

 

安居さんおすすめ オランダのサーキュラーエコノミー先進事例②

もう一度日本を出て視野を広げようと、2015年にドイツの大学院に留学することに決めた。ドイツ語の勉強や海外の大学のオンライン講義を受講しながら準備を進めた。

ドイツではサステナビリティについて大学院で学びながら、フォトグラファーとしての活動も始めた。ドイツだけでなく、フランス、イタリア、デンマーク、フィンランドなどに出向き、サーキュラーエコノミーのキーパーソンへの取材を重ねてきた。

こうして、一人で始めた活動が徐々に形になり、自身が監修するサステナブル・ウェブマガジン「Earthackers」は現在経営者から学生まで読まれるメディアに成長している。安居さんは、「日本企業のサーキュラーエコノミーへの関心は大きくなっている。情報発信を強化していきたい」と意気込む。

 

 

 

 




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