(1)からの続き
4月5日に代官山UNITで田中優氏による今回の原発事故に関する講演会がありました。当日は500人もの人が来場し大変な盛況でした。
講演会の様子はアースガーデンがユーストリームで公開しています。是非ご覧になることをおすすめしますが、編集員が聞いた内容の要点をかいつまんでご紹介します。
■アースガーデンHP http://www.earth-garden.jp/community/9796/
◆前半の記事はこちらから
原発問題について絶対に知っておきたい12のこと(1)
7.脱原発のキーは”ピーク”にあり
日本の発電所の平均稼働率は58%です。一方ドイツでは平均稼働率が72%。日本とドイツは実は電気の使用量の平均値はほぼ同じなのですが、この稼働率の差を生んでいるのはピーク時の電気使用量なのです。
発電所を作るときピーク時の電力量に合わせてその規模を決めます。ピーク時に大きな電力需要があれば発電量の大きな電力所をつくるわけです。お話したように日本とドイツの平均使用量はほぼ同じですが、ピーク時の使用量を見ると日本の方がずっと大きいのです。ピーク時間というのは年間で10時間だけですので、ピークが大きいほど平常時の遊休設備が増え、これが平均稼働率の違いに現れるのです。
ちなみに田中さんによるとピーク時間の使用量をドイツ並に減らすと日本の電力所の25%をなくすことができ、さらに言えば、日本の原子力発電所のシェアが20%ですからその全てを無くすことができるというわけです。
ピークの電気使用量の削減の問題についてはぜひ講演会の映像で御覧ください。
8.原子力エネルギーの値段
“原子力エネルギーは安い”という話を聞く方もいらっしゃるのではないでしょうか。
東京電力によれば5.9円/kwとなっています。この数字はどこから来たのでしょうか。実はこれは資源エネルギー庁の資料なのです。
では実際いくらかかっているのかというのはわかりません。そこで田中さんが原発の「設置許可申請書」という資料を調べたところ、「発電単価」欄を平均してみると15.9円/kwだったのです。
これは他の電力の中でも最も高い電力です。原子力発電は決して安くなく、さらに日本の電気料金も世界的に見て高水準となりアメリカの3倍にもなります。
9.エネルギーもガラパゴス化する日本
前述の通り原子力発電のコストは決して安くなく、現在では太陽光発電の方が安価なエネルギーになりました。
例えばヨーロッパの新設発電所は6割が自然エネルギー発電所です。ドイツでは太陽光発電の発電量は原子力発電を超えていますし、スペインの最大発電量は風力発電によるものです。
そうは言っても日本では無理でしょうと思う方もいらっしゃるでしょう。講演会の中で東京大学と九州大学の研究内容が触れられていますので是非御覧ください。
10.スマートグリッドの未来図
アメリカのコロラド州ボルダーでは既に自然エネルギーとスマートグリットを組み合わせた低炭素化社会をつくろうという試みがあります。既に余ったエネルギーを売電したり、各電化製品の使用電力が確認できるようになり、以前月10000円ほどあった電気代が300円ほどになったといいます。
またスマートグリッドを使えば天気のいい日は余った電気を電気自動車に蓄電し、雨の日にはその電力を利用するということも将来的にはできるようです。ある会社の試算では全米の20%の電力を風力発電でまかなえるといわれております。
(講演会の中で上映された動画で詳しい説明がされています。
《動画 1:39:00 – 1:46:30》)
11.チェルノブイリの試み
旧ソ連で起きたチェルノブイリ原発事故後、周辺地域ではある取り組みが行われています。NPO団体『チェルノブイリ救援・中部』は土地の中の放射能物質を吸収する菜の花を周辺地域に植え、菜の花の種から菜種油を抽出、ディーゼル油にしてトラクターを走らせるのです。
さらにそのかすを微生物に分解させるとメタンガス(都市ガス)が発生、最終的に残ったものを放射性廃棄物として処理するというものです。
12.マスコミが原発反対と声高にできない理由
ここまでの情報をご存じの方は少ないのではないでしょうか。テレビも新聞もマスコミではまず報じられない内容ばかりですからそれが当然なのです。ではなぜ報道されないのか。
そのひとつの要因は電力会社がマスコミにとって大きなスポンサーであることです。東京電力を筆頭に東北、中部、関西、九州の各電力会社の広告費(ACや政府広報も含む)は広告費第一位のトヨタ自動車を超える金額になるそうです。また経団連などの業界団体の役員などを務めているのも電力会社の人間だったりします。
このような状況下でマスコミが“反原発”を声高に主張することは難しいというのが田中さんの分析です。