新型コロナウイルスの猛威が止まらない。世界の感染者数は177万人(4月12日時点)を超えた。このウイルスが起きた背景を、再生可能エネルギーを軸に考察していくと、行き過ぎたグローバリズムや経済効率性による「気候危機」があるとされる。コロナ後の社会の持続可能性には、気候変動と再エネへの取組が不可欠だ。複数回に分けて寄稿する。(寄稿・平井 有太=ENECT編集長)

感染が広がる新型コロナウイルス

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” open=”no” style=”default” icon=”plus” anchor=”” class=””]今も猛威を奮い続ける新型コロナウイルス・COVID-19。東京の3週間後の姿は、世界全体の死者数の約2割を占めるアメリカにおいて、特に感染が広がるホットスポットNYであるということを語る識者もいる。まったく気を緩められない状況が続く。

中国は武漢で始まった、今や第3次世界大戦にも例えられる新型コロナウイルスとの戦いは、当初誰にとっても「うわぁ、大変だな」という程度の他人事であった。それがあれよあれよという間に深刻な危機となり、世界が慌てふためく中、CNNが報道したローマ教皇フランシスコの言葉に注目が集まった。

「新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は、環境危機を無視し続ける人類に対する『大自然の反応』の1つ。これが自然の報復なのかどうかは分からない。だが、自然の反応であることは間違いない」、「新型コロナウイルスの流行は生産と消費を減速させ、自然界について熟考するチャンスをもたらした」という教皇の言葉に「はっ」とさせられた人は、少なくない。

現にニュースでは、一時的であれ中国の大気汚染がおさまり、ベネチアの水路の水が澄み、インド北部の町からは数十年ぶりに、200キロ以上離れたヒマラヤ山脈が見晴らせるようになったといった報道がある。つまり期せずして、人類がノンストップで走らせてきた経済活動が地球環境に何をもたらしてきたか、新型コロナウイルスが私たちに伝えてくれているのだ。

再生可能エネルギーに日常的に触れていると都度、社会の根源を支えるその機能、私たちの生活のあらゆるところに影響を及ぼす底力に感服させられる。特に今、世界各地で起きている異常気象など気候変動がもたらす地球の危機を知る中で、目下「再生可能エネルギーには地球をも救うポテンシャルがある」ということを、学んでいる最中だ。

だからこの新型コロナ騒動を受けても、直感的に「気候変動が関係しているのではないか?」、「であるならば、再生可能エネルギーへの転換が、結局は自分たちの生活を救う一番の近道じゃないか?」という発想が頭に浮かぶ。しかし先述の教皇の言葉でさえ、もし「根拠のない、一宗教家によるキレイゴト」と揶揄された時、まだ反論できる言葉が自分にはない。しかしそこを論理的に、説得力あるかたちで語る方々が現れ始めている。

電力自由化のずっと前から、国内外で再生可能エネルギーの普及に尽力されてきたNPO法人「エコロジーオンライン」上岡裕理事長は、自然が破壊されることによって、住処を追い出された動物が餌を求めて市街地に出没したり、植物でも動物でも、希少種を食料や漢方として利用したりすることで人と動物の接触が促され、それが新たな「人獣共通感染症」発生に繋がっていると語る。カリフォルニアやオーストラリアの大規模な山火事、アマゾンの森林伐採、はたまた永久凍土の氷解によって未知のウイルスが解き放たれるリスクは、ここであえて深堀りする必要もないだろう。また、気候変動の根幹にはCO2排出の問題があり、それは常に環境破壊と表裏一体なのだ。

そして、人間が排出するCO2の約半分は、生活における電気の使用からきていることがわかっている。つまりCO2の排出は、私たちが日常的に使う電気を化石燃料から再生可能エネルギーに切り替えさえすれば、かなりの部分が抑制できる。

加えて、国立環境研究所主席研究員で「ダニ先生」として知られる五箇公一先生が、3月21日放送のBS1スペシャル「ウイルスVS人類~未知なる敵と闘うために~」で展開された話には、「我が意を得たり!」という痛快感すらあった。

「新型コロナの遠因は気候変動。それを引き起こしているのは、南北格差から始まる経済格差を埋めようとする中での工業発展という、そういったものが途上国ですごい勢いで、かつての先進国以上に速い速度で起きている」

「そうすると、”生物多様性のホットスポット”と言われるエリアの真ん中で今回のようなことが起きる。開発と破壊、森林伐採といったことが急速に進む中、そこに閉じ込められていたウイルスたちが、新たな住処として人間を見つけ、それが南から北の人口密集地に入り込むという図式が、1980年代以降からずっと続いているのだ」

「気候変動を起こしている開発とそういったグローバル化というものに、実はウイルスがすごい勢いで便乗してきている。その時、大きな課題は『南の国々が森を切らなくてもいいようにするにはどうしたらいいか?』ということなのに、未だ世界はそのゴールには到底辿り着かない。今回の問題はそのしっぺ返しと言えるだろう」

「要は、人類は、本当に手を出してはいけないところまで自然に対して侵食してしまった。この悪循環を絶つためには、そもそもの究極的な『自然共生』、つまりライフスタイルの変換を今から始めないと、持続性が保てない。それが今、このウイルスが私たちに教えてくれていることのような気がしています」

SARSやMERS、ヒアリの騒動までをダニから見える世界に照らし合わせ、五箇先生が導きだしてきた回答は、核心を突いているからか、自分の在り方を鑑みてドキリとさせられる。その視点から思い出されるのは、粘菌から世界を見た天才・南方熊楠の存在。これから私たちには、子どもたちや家族、そして自分自身を守るため、観念的でなく、今そこに実際に在るものとして森羅万象を捉え、地球環境と共存していく思考、姿勢、ライフスタイルが必要とされるのだ。

最後にエコロジーオンライン・上岡理事長の言葉を引用して、本文の〆とする。

「私たちは自然を破壊することで多くの利益を得る。だが一方、新型コロナウイルスのような多くの不利益も生じてくる。私たちが目先の利益だけを追い求めていたら、この地球上で持続的な暮らしを営むことは難しい。まさに今、SDGsの精神が必要になってくる。今回のパンデミックによって私たちは多くの犠牲を払うことになった。こうした事態を収束させ、今後も起こさないために今、何を考え、何を行動すべきなのか。しっかりと考える時なのだろう」

ENECT

ダニ先生、「新型コロナの背景に気候変動」
国際NGO、「気候変動が感染症リスク高める」
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