毎日新聞の一角にあるコーナー「あなたの愛の手を」。昭和39年から、乳児院や児童養護施設で暮らす子どもを紹介し、広く里親を募集しています。行政と連携しながら、新聞記事を見て里親になることを希望する夫婦に面談や実習を行い、家族になった後もより良い関係を築けるよう綿密な支援を行ってきた団体に話を聞きました。(JAMMIN=山本 めぐみ)

施設の子どもを新聞で紹介、新しい里親とつなぐ

1976年11月21日の「あなたの愛の手を」。子どもの背景が書かれていた時代もあったが、今はプライバシー保護の観点から、子どもの背景については書かれなくなった

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公益社団法人「家庭養護促進協会 大阪事務所」は、日本に20数団体ある民間の養子縁組あっせん機関のうち児童相談所と連携し里親探しをする唯一の団体として、事情があって親と暮らすことができない子どもたちに里親を求める「愛の手運動」を、毎日新聞社と児童相談所の協力のもと続けてきました。

「毎週一人ずつ子どもを紹介していただいています」と話すのは、団体スタッフでソーシャルワーカーの山上有紀(やまがみ・ゆき)さん(48)。「あなたの愛の手を」欄は昭和39年5月5日に初掲載し、以来56年にわたり、大阪版では毎週日曜の朝刊に掲載し、これまで2806回(2020年8月3日現在)にわたって子どもたちを紹介してきました。

現在、大阪府内には50箇所ほどの乳児院と児童養護施設があり、それらを管轄する大阪府6箇所、大阪市2箇所、堺市1箇所の合計9箇所の児童相談所と連携しながら、広く子どもたちの里親を募っています。

お話をお伺いした山上さん(右)と和田さん(左)

「大阪市だと大阪市でしか、堺市だと堺市でしか里親を探すことが難しい中で、私たちが間に入って新聞掲載をすることで、地域を限定せず全国から里親を募ることができ、出会いのチャンスが広がります」と話すのは、同じくスタッフでソーシャルワーカーの和田靜(わだ・しずか)さん(49)。団体として里親希望者の面接や家庭訪問調査、実習から養子縁組、家族になった後も綿密なサポートを行っています。

「子どもを迎えた当初は子育てへのフォローがメインですが、子どもの成長と共に次第に家族のかたちができてくると、日々の生活は少し落ち着いて穏やかになってきます。その時は遠くからご家族を見守り、子どもが思春期になっていろいろと理解できる年代になったり成長して自身のルーツを探したいとなったりした時には、親だけでなく本人の相談に乗ることもあります。子どもの成長を見守る気持ちは、いうなれば『遠い親戚のおばちゃん』のような感じでしょうか」

「生い立ちも含め、
その子の全てを受け入れられるか」

なっちゃん(写真中央)は2歳4カ月のときに、乳児院から養親さんのもとに迎えられた。「一緒に暮らし始めて1年、特別養子縁組が無事に成立し、晴れて戸籍上も親子になることができました。その記念にご家族3人で、写真館で撮られた写真です」(山上さん)

「私たちが紙面で紹介する子どもたちは、多くが生まれた家庭には戻れない背景を持つ子どもたちです」と二人。

「乳児院とか児童養護施設には今でも孤児院のようなイメージがあって、養子になる子どもは両親共に亡くなってしまったとか、経済的な事情で育てられないというイメージを持っている方も多いのではないかと思いますが、ネットカフェのトイレで出産、置き去りにされていた子、レイプ被害に遭った母が誰にも相談できないまま自宅出産した子、母が覚せい剤を使用した状況で胎児期を過ごした子‥。実際は壮絶なケースが数多くあります」

「あるいは実親の病気や障がいによって子育てが難しいというケースも少なくありません。特に最近は、うつや統合失調症、人格障害などの精神疾患でしんどさを抱え、養育が難しいという母親が増えています。誰にも協力を得ることができず、母親一人で困難な状況を抱えているというケースがとても多いです」

「里親を希望される方には、事前の研修や面接の中で、なぜ養子を迎えたいのか、こういった背景も含めて、我が子としてその子のすべてを受け入れることができるかということをよく考えてもらっています」

一対一の愛情を受けて、子どもは変化する

「養子を育てたい夫婦のための連続講座(養親講座)」にて、先輩里親さんの体験談を聞く。「『我が子』と出会うまでにどんなプロセスを経てきたか、担当したソーシャルワーカーとインタビュー形式で話してもらいます」(山上さん)

新しい親ができて愛情を受けた時、子どもたちは目に見えて変化すると二人は話します。

「施設では、それがどんなに小さいグループであったとしても、どうがんばっても『集団』。子どもたちの生活は毎日24時間ありますが、職員さんは勤務の8時間という枠で入れ替わらざるを得ません。ずっと同じ人から愛情をかけてもらったりお世話をしてもらったりすることが難しい状況です。しかし一対一で愛情を受けるようになると表情が変わります。肌がつやつやして、子どもらしくなります。居場所ができて根っこが生えて、安心と自信が持てるようになります」

「抱かれ心地、肌触りや話しかけられる声のトーン…。そういったことを子どもは全身で感じ、言葉にはできない信頼関係が築かれていきます。一人でも多くの子どもが、絶対的な愛情をベースに育って欲しい。実親の元に戻る見込みがないのであれば、できるだけ早いうちに、あたたかい愛情をかけてもらえる家庭を用意できたらと思っています」

「本当に受け入れてくれるのか」子どもたちがとる試し行動

試し行動のひとつが「過食」。かごいっぱいのお菓子、並べられたペットボトル、ふりかけは何袋も開けてお皿に山盛りに…。「研修では、養親さんから提供いただいたこういった試し行動の実例の写真も見ながら、子どもを迎えてからの生活のイメージをふくらませてもらいます」(山上さん)

子どもが新しい家庭に迎えられた時、「本当に自分のことを受け入れてくれるのか」と試し行動をとることがあるといいます。

「過食や偏食、わざと牛乳をこぼしたりお漏らしをしたり、時には暴力をふるったり…。『こんな嫌なことをしたら、自分のことを拒否するだろう』と、大人を試すような行動を『試し行動』といいます。その裏には『こういうことをしても、自分のすべてを受け入れてほしい』という子どもの切実な思いがあります」

「『施設ではおとなしかったのに、家では親の言うことを聞かない』ということがあります。施設でその子が見せていたのは、その子の一面でしかなかった。その子が里親に対して施設の先生と同じ対応を求めているわけではないし、『親としてどんな自分も受け入れてほしい、認めてほしい』という思いを抱いているのです」

子どもを迎えて間もない家庭を対象に、月に1度、親子サロン「JBクラブ」を開催。「集まった子どもたちを自由に遊ばせながら、職員と里親さん、里親さん同士で話をしたりしています。子どもとの毎日で困っていることや悩んでいること、近所のママ友さんには話しにくいことも、同じ立場だからこそ分かち合える場となっています」(山上さん)

「新しく出会う大人を無条件で受け入れられるほど楽な生き方をしてきた子どもたちではありません。心の傷の深さは子どもによって異なりますが、それまで生きてきた中で納得できない別れもたくさんあったと思います。『今度新しく来たこの人は、自分のことを絶対に見捨てない』ということを見極めきれないと、全身で甘えられるようにはならないのです」

こういったことを踏まえ、里親になるための研修では、なぜ試し行動をするのか、どんな対応をすれば良いのかなども事前に学んでもらうといいます。

「『なんでそんなことするの!』と怒ってしまうと、子どもは『良い子でないと受け入れてもらえない』と感じます。自分のすべてを受け入れられていると感じられないと、心の底からの信頼関係を築くことはできません。里親さんには、命に関わること以外は叱らず、まず半年は子どもをまるごと受け止めてほしい、何歳で迎えたとしても、0歳からの育てなおしをしてほしいとお願いしています」

「血はつながってへんけど、今はほんまの親子やねんで」

1982年から、毎年夏休みに小学生以上の子どもを対象に「ふれあいキャンプ」を開催。「キャンプ中は特に『養子や里子のキャンプ』であることを強調するわけではありませんが、『同じ立場の子どもが他にもたくさんいるよ』ということを知ってもらう機会になればいいなと思っています」(和田さん)

もう一つ、養子縁組した親子が通るのが、子どもに対して養子であることを伝える「真実告知」。

「時代も変化し、告知について、今はひた隠しにしたいという人は少なくなっています。私たちも『子どもたちには自分の生い立ちや事実を知る権利があって、小さい頃からの真実告知が必要』と里親さんに伝えていますが、いつ、どのように伝えるかはご夫婦で考えてもらいたいと思っています」

「里親さんが『研修で教えられたから伝える』のではなくて、ご自身が大切なことだと感じて、告知してほしいと思っています。大切なのは血のつながりがあるかどうかではなく、告知の際には『実の親子じゃない』というところに焦点を当ててほしいわけではありません」

「『あなたと出会えて、家にきてくれて、家族になれて本当によかった。パパとママは幸せだよ』と。大切なのはそこなんですよね。親として心からそう思える時に、子どもがわかる言葉で『血はつながってへんけど、親子やねんで』って伝えてほしいと思っています。そのタイミングは家族によってそれぞれなのですが、より良い物語になるように私たちも全力でサポートします」

「いろんな家族のかたちが広がれば」

毎年秋に開催している「おやこDEうんどう会」。「親子で楽しめるオリジナル競技をたくさん用意しています。職員にとっても、子どもたちの成長やより家族らしくなっていく姿を目にできる、やりがいのある行事です。高校生や大学生になった養子たちがボランティアとして協力してくれています」(山上さん)

「親子とは何か。血がつながっていても問題が起こる時は起こるし、血がつながっていなくても仲の良い親子もたくさんいます」と二人。

「親子とは、家族とは『こうあるべき』『こうしなければ』に縛られると、しんどくなってしまう。今はまだ不妊治療の末に養子縁組という方法をとられるご夫婦がほとんどですが、養子縁組という手段があるということはもちろん、家族にもいろんなかたちがあるんだということをこれまで以上にたくさんの方たちに知ってもらえたらと思います」

「養子というと『かわいそうな子』というイメージがまだまだ付きまとうのかもしれません。確かにそれまで苦労もたくさんあったけれど、新しい親と出会って家族ができた。それって結構ラッキーなことだと思うんです。里親さんも、『かわいそうだから』ではなくて『育てたいから』育てているし、子どもの成長を通じて、たくさん幸せをもらっている。そういう親子のあり方を理解してもらえるといいなと思います」

養子縁組の親子を応援できるチャリティーキャンペーン

チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」(京都)は、「家庭養護促進協会 大阪事務所」と1週間限定でキャンペーンを実施し、オリジナルのチャリティーアイテムを販売します。「JAMMIN×家庭養護促進協会 大阪事務所」コラボアイテムを買うごとに700円がチャリティーされ、団体がこれまで携わった親子を対象にしたイベント開催のための資金として活用されます。

「まだまだ養子縁組の親子というのは少数派である中で、他の人たちには言えないような悩みを相談できたり、子どもにとっては、養子は自分だけじゃないと思えたりする場をつくりたいという思いから、夏のキャンプや秋の運動会などのイベントを定期的に開催しています。今回のチャリティーは、こういった家族向けのイベント開催のための資金として使いたいと考えています。ぜひ応援いただけたら」(山上さん)

「JAMMIN×家庭養護促進協会 大阪事務所」8/3~8/9の1週間限定販売のコラボアイテム(写真はベーシックTシャツ(カラー:キナリ、価格は700円のチャリティー・税込で3500円))。他にパーカー、トートバッグやキッズTシャツなども販売中

JAMMINがデザインしたコラボデザインに描かれているのは、”Family(家族)”とかたちどられたリボンと、その周りにいるいろいろな生き物の姿。家族のかたちは皆それぞれで、血縁やかたちにとらわれず、それぞれの距離感で一人ひとりが心地よく感じられたら、 それこそが「かけがえのない家族」なのだという思いを表現しました。

チャリティーアイテムの販売期間は、8月3日~8月9日の1週間。JAMMINホームページから購入できます。JAMMINの特集ページでは、インタビュー全文を掲載中!こちらもあわせてチェックしてみてくださいね。

親に育てられない子どもたちに、新しい家族を。養子縁組と、家族の健やかなあゆみを支援〜公益社団法人家庭養護促進協会 大阪事務所

山本 めぐみ(JAMMIN):
JAMMINの企画・ライティングを担当。JAMMINは「チャリティーをもっと身近に!」をテーマに、毎週NPO/NGOとコラボしたオリジナルのデザインTシャツを作って販売し、売り上げの一部をコラボ先団体へとチャリティーしている京都の小さな会社です。2019年11月に創業7年目を迎え、コラボした団体の数は300を超え、チャリティー総額は4,500万円を突破しました!

【JAMMIN】
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