一見、学術的な学びの様に思われるが、海外の投資家の考えの裏にある歴史的背景、日本の企業や各ステークホルダーの通ってきた考えの両側面を垣間見ることができ、今に至る活動の土台をしっかりと理解した上で行動を取れる、実践上において大事な学びと言えよう。

そのため、外国投資家を意識した日本企業行動の戦略をお手伝いするような経営、サステナビリティ、IRなどのアドバイスを行うコンサルタントの方々には、最低限の知識として、本講座の内容を把握していることをお勧めしたい。

また、企業・運用機関など、双方において対話(エンゲージメント)の全体調整や戦略を担う方にも、前提知識として是非確認頂きたい。WhyからHowに重きが移っている時代だが、Whyを忘れると出口なきHowに向かってしまう危険性があるため、縁の下の力持ちとして各社の投融資を意識したサステナビリティ戦略の調整者には、知っておいてもらいたい内容だ。

尚、この縁の下の力持ちが誰であるかは、各組織の形態によっても異なると思われるが、企業年金担当、財務、人事、経営企画、営業、そして「ESG/サステナビリティ/責任投資」担当者など、企業経営とお金の流れの橋渡し役となる方にとって有効となるだろう。

一方で(少なくとも2020年度までの内容においては)、「初級編」とあるが、ある程度運用機関、ESG関連機関に触れる仕事をしていない人にとっては、不慣れな機関や用語が多いかもしれない。そうした方々の受講を勧めない訳ではないが、その場合は独自の情報収集や復習を多めにする必要となる可能性は高いだろう。その代わり、学生でも誰でも受けられる手軽さがあるので、特にこれからサステナブルな事業と経済の流れの中で自分がどの様に関われるかを考えたい人には、多少難しくても受け甲斐のある講座と言えよう。

また、「ESG要因を考慮した企業と投資家の実践する仕組みの背景」に重きを置いている講座のため、「労働問題」、「生物多様性の価値」など個別の環境・社会課題への取り組みを深堀する担当者等にとっては、優先度第一の講座ではないかもしれない。情報源がとても丁寧にまとめられている講座なので、そうした方に関しては、講座の学びを発展させる形で調整役の方が深堀を進めて有効活用できることも考えられる。

自身も当講座に近い内容に講演で触れることも多いが、長くとも90分の単発講演を聞いて吸収できる内容には限界はある。何かしらの講演で興味を持った方々にとって、じっくり自分の時間で吸収して頂くことが出来るこのオンデマンドで約15分×18の講座は、地に足がついたサステナブル事業とファイナンスの好循環を創り出す一助となることに期待したい。

一般社団法人鎌倉サステナビリティ研究所が提供する「ESGアナリスト講座」(初級編)

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