さらに地域再生の途上にある古閑地区では地区の女性たちが作った豚汁やお漬物とお弁当で昼食をとり、地震からの歩みを当時の写真を交えて区長より説明を受け、造成途上の地区内を視察した。神瀬の消防団員も視察団に参加しており、豪雨時に保育園のプールをボートに仕立てて45名の村民を救助した上蔀忠成さん(47)は地区の消防団と災害時のことについて話し込んでいた。さまざまな話を聞きながら、「行政との関係性と対応窓口の明確化」「地域のコンセンサスの取り方」「なによりもコミュニティの団結」が大切だと参加者は感想を口にした。最後に益城町の木山仮設団地を訪問。自治会の方や住民と交流しながら、仮設生活一か月目の神瀬の人たちは仮設での暮らし方や近所づきあいなどについて話し込んだ。
やっぱり神瀬に住みたい
岩崎住職は「山と平野、地震と水害、条件や方法は違っても地域の再生に大事なことは共通する」と語った。村の中でも山奥で、他の土地がうらやましく思えたこともあるという神瀬の人たち。しかし未曾有の被害を受けたときに、即座に団結して会議を開き、今回も10代から70代までが同じ目的で自主的にバスを仕立てて視察を行う行動力を持ち、故郷に対する思いは誰にも負けないという自負がある。
参加した16歳の女子高校生は「高校を出て、就職して、帰ってくるときはやっぱり神瀬に帰ってきたい」と帰りのバスの中でみんなに語りかけた。高台移転や集団移転、そしてダムの問題などさまざまな話が聞こえてくる。公費解体の申請期限も12月末にせまってきた。
神瀬の人たちは、今回の視察を通し、地震から5年目の今も復興途中にある状況を目の当たりにし、故郷で安心に暮らす方法を現実と対峙しながらもじっくりと見つける取り組みを続ける想いを強くした。