新潟県十日町市は、毎年平均積雪は2メートルを超え、1年の半分が雪に覆われる。しかし、豪雪地帯のうち人口密度の高さで言えば、十日町市は世界一だそうだ。

笑顔で取材を引き受けてくれた村人と


なぜ、この地に多くの人々が住み続ける「豊かさ」は何なのか。

2004年、マグニチュード6.8の中越大震災が十日町市を襲った。十日町市の山あいにある集落「池谷」も道路や田んぼ、住宅などに甚大な被害を受けた。当時半分以上が70代の13人の村だった。限界集落と言われていた池谷集落は、村をたたむところまで追いつめられた。

「中越大震災が起きて、皆で体育館に非難したとき、そりゃあもう中の雰囲気は悪かった。でもおらたちは、暗くて悲しいときこそ、明るくやろうって、輪になって村の伝統の歌『天神囃子』を歌ってたんだ。いやあ、まわりの集落の人たちからは、こんなときに歌うこったぁ、おかしな奴らだって変な顔された」と村人は話す。

その後、池谷集落は震災復興から立ち上がり、都会との交流を続ける中で移住者も増え、限界集落から脱出した。

「どんなに娑婆が不景気って言ったって、うちらはもともと不景気だから関係ないから」と大きく世の中を笑い飛ばす力。

「よそ者には気をつけろ、という時代は終わったんだ。ここを若者の理想郷にしてやりたい。限界集落なんて言われてたけど、おらたちは夢を持ってがんばってるんだから、あんまり限界なんて言われたくない」

「15歳から今(75歳)までずっと農業をしてても、やっぱり収穫のときは楽しんだ。農業は大変だったけど、大変なことになぜか気付かずもうこんな歳だよ」

「何事も輪が大事。誰かの足をひっぱるとか、騙すとかなく、協力して村人が家族のように生きているだけ」

目の前のことや人に全力で向き合い、人に対して大きな世話をやく。豪雪地帯で住みにくいと言われているからこその、生き方がある。村人たちの口から出てくる言葉たちには、幸せに生きるヒントも隠されているように思う。(オルタナS特派員=坂下可奈子)