ENCOUNTER編集長/竹生泰之さん



出版不況が叫ばれて久しい中、個性豊かに展開の幅を広げている雑誌がある。リトルプレス、ZINEと称されるインディーズスタイルの自費出版誌だ。

自身の作品をまとめたアートブックやスケーターの写真集、絵本やエッセイなどジャンルは多岐に渡る。クリエーターが読者の為ではなく自分の表現のために作る雑誌。デザイン性の高さや内容のニッチさがウケて、書店で特集を組んだり、300種類以上の作品を扱うオンラインサイトまで登場している。

BMX(20インチの競技用自転車)と旅をテーマにリトルプレス「ENCOUNTER」を出版している竹生泰之さん(36歳)に魅力を聞いた。

「雑誌作るのって、めちゃくちゃ辛い。元々、写真も文章書くのも興味無かったし。でも苦労した先に出来あがった雑誌を見ると、それはもうスゴイ達成感。BMXと旅の雑誌ではなく、人間の機微(心の動きや物事の趣)を俺なりに表現したい。雑誌はコレクションする楽しみも良いよね」

竹生さんは大学卒業後、BMXのプロになるため渡米。23歳の時、練習のしすぎで椎間板ヘルニアになり、手術を受けたものの引退を余儀なくされた。帰国後はプログラマーとして企業で働きつつ、BMXの大会運営に参加し、世界大会を仕切るまでになった。以降10年間BMXに携わっている。

BMXフリースタイル/ダンスの様なパフォーマンス



「大好きだったBMXでプロになる夢を断たれて、しばらくは抜け殻の様だった。でも仲間に必要とされて大会運営に参加し始めて、その中で出版物を作る事に出会った。嫌々始めたのに出来が意外と好評で、表現する楽しさを覚えた。自分の可能性なんて、やってみないと分からないもんだよ」

2011年にスタートしたENCOUNTERは発行部数1500部、3号が3月31日に日本・アメリカ・イギリスで同時リリースされる。現在はオンラインや自転車ショップのみでの取り扱いだが、書店への進出もしたいという。


作り手の想いが詰まった非営利のリトルプレスは世界中で作られており、雑誌の未来形なのかもしれない。(オルタナS特派員=中川真弓)


■ENCOUNTER http://sennproject.com/