「日本では美大を卒業しても、アートだけで生活できる人はあまりにも少ない。
僕の卒業した多摩美術大でも、卒業生数百人に1人居るかいないか」。
そう語り、2003年から「インターネット時代のアート」をテーマに作品を発表
している現代美術家の泰平さん(34)は、この現状を打破するプロジェクトを
進めている。
一般的なアート作品の売買は、ギャラリーでの展示、オークション、アートフェア
などのイベントに限られる。しかもマーケットが独特なため玄人の嗜好品という
イメージだ。
美術大学の学生は在学中にたくさんの作品を作る。多い人だと卒業するまでに
大小1000個以上という多作家もいるという。しかし、買い手や保存場所がなく
捨ててしまう事も少なくない。
そこで考えたのが、インターネットを使ってアート作品をもっと簡単に売買できる
プラットフォームを作る事だ。日本の現代アート業界が抱える問題を解決し、
アーティストが長くアートを続けられる手段として、3つの特徴を持つサイト
「startbahn(スタートバーン)」を立ち上げる。
Startbahnは3つの異なるアカウント「アーティスト」(作品提供)、
「コレクター」(購入/売却)、「レビュワー」(評論)の中から、自分が
どこに参加したいのかを選ぶことから始める。
自分が取得できるアカウントは1つだけだ。
■特徴1.低価格帯/多品目で、一般人が気軽に参加出来る
アーティストは今まで捨てていた様な作品を、低価格でしかも無審査で掲載できる。
一般ユーザーは価格面の敷居が低いので気軽に作品を買える。ギャラリーに展示
される事の無かった作品もお披露目の場を得る。
■特徴2.アーティストが落札者を“逆指名”するオークション
お金を積んで落札するのでは無く、アーティストがコレクターのプロフィールを見て、
自分の価値を本当に理解してくれる人に売れるシステムを採用。また、作品を購入した
コレクターが作品を売却する時は売買価格の一部が作者に還元される。将来還元金が
入る可能性を用意することで、オークション時に希望価格に到達しなくても作品を
快く販売できるようにした。
■特徴3.レビュワーに対価を払う
作品を見てレビューを書き、その作品が売れたらレビュワーにも報酬が払われる。
アーティストへは客観的意見として、コレクターには作品やstartbahn自体を
真剣に見てもらうための指標となる。また美術品と触れ合う機会を多くの人に
持って欲しいとの願いが込められている。
構想5年のstartbahnは今春テスト試行などを行い、サービス開始を目指している。
大衆化したオタクカルチャーに続き、日本の現代美術が市民に広がる事を期待したい。
(オルタナS=中川真弓)
(Photo: top GION, middle/ bottom Shiori Kawamoto. Courtesy of YUKARI ART)
■現代美術家:泰平 http://twitter.com/#!/taihei
■startbahn http://startbahn.org/