東京を中心に活動するバンド、Acushla(アクーシュラ)のボーカルとして活動する岡嶋かな多さん(27)。バンド活動と平行して、作詞家としても活動する。これまで、安室奈美恵やHey! Say! Jump!、黒木メイサ、超新星、Do As Infinity含む数多くのアーティストに歌詞を提供。「高校や大学に通っていないので、人を通して勉強してきた。みんなと話したことが歌詞になる」と話す。(聞き手・オルタナS副編集長=池田真隆)

岡嶋かな多さん(写真手前)


■高校へ通わないことで、不安や迷い、劣等感を感じることもあった

——音楽との出会いはいつでしたか。

岡嶋:中学時代でした。クラスメイトの前で歌ったらみんなに喜んでもらえた。それまで人に喜んでもらう経験をあまりしたことがなかったので、すごくうれしかったです。

——小さい頃から音楽活動を続けていきたいと思っていたのですか。

岡嶋:中学の卒業近くから、将来は音楽で食べていこうと決心していました。高校へは行かずに、音楽の勉強をするためにビクター音楽カレッジという専門学校に通いました。

——高校へは通わない決断をした時に、不安や悩みなどはありませんでしたか。

岡嶋:みんなは高校へ通っているのに、私だけ違う道を選んだことに対して迷いや不安もありましたし、劣等感も感じることがありました。また、中学を卒業するタイミングで引っ越したので、周りに悩みを相談する友達もいなかったです。

でも、返ってそのことで自分との対話ができる時間を持つことができて、自分とゆっくり向き合うことができました。

——不安や迷いがあった中で、岡嶋さんを動かしたものは何だったのでしょうか。

岡嶋:根拠はないのですが、できると思ったからです(笑)。自分が頑張っていることを通して、みんなの頑張るきっかけになることができるのなら先頭切ってその役割を全うしたいと思いました。

バンド活動でも作詞を手がける。


■自分にとって小さな一歩かもしれないけど、それが連鎖して大きな一歩になる

——プロとして初めて歌詞を提供した歌手の歌が渋谷の巨大スクリーンで放送されたときには、人目もはばからずに号泣したそうですね。

岡嶋:信じられない想いで一杯でした。私は、そのスクリーンの下にある渋谷TSUTAYAで6年間アルバイトをしていたので、普段、出勤するために通う道を歩いている人たちが私の書いた歌詞を聴いてくれていると思うと、とても幸せでした。

——これまでに、有名アーティストへも歌詞を提供していますが、どのようにして言葉を生み出すのでしょうか。

岡嶋:その曲に一番生きる言葉をイメージして、その言葉を時代が求めているのか、耳や記憶に残るものなのか、そして、その言葉をいかに自分らしく表現できているのかに気をつけて歌詞を作っていきます。

——普段の生活から歌詞作りで意識していることはありますか。

岡嶋:人間観察はよくしています。また、人と話しているときに得たインスピレーションは大切にしています。私は、高校も大学も通っていないので、人を通して勉強してきました。

その日に会った人と話したことを、後で一人の時間を作って思い返します。そして、自分の頭の中で整理して、落とし込みます。そういう時間を大切にしてきました。

——人と話すことが好きなのですね。

岡嶋:老若男女構わず話します。それ以外にも旅が好きなので、刺激や発見がある度に自分の心に貯蓄しています。そうして、積もったものが歌詞へとなっています。

——進路に悩んでいる若者に対してのアドバイスをお願いします。

岡嶋:はじめてみないとわからないと伝えたいです。はじめてみたら、予想以上に喜んでくれる人がたくさんいます。その笑顔を通して、周りのみんなが笑顔になったり、希望をもったりするから、一人ひとりが一歩を踏み出すことに意味があると思います。

自分にとっては小さな一歩かもしれないけど、それが連鎖して大きな一歩になる。一度しかない人生なので、やりたいことをやって生きてほしい。きっと、生きてて良かったと実感すると思う。

——岡嶋さんは昔からポジティブだったのでしょうか。

岡嶋:昔は何でもナナメから物事を見たり、悲観的に捉えていました。けれど、真正面から物事に向き合うことで人間らしく生きていくことができると実感しました。真正面から向き合うと、その分、辛くて苦しいこともありますが、生きていることに対してのリアリティを感じます。

人生捨てたもんじゃない!逃げずに生きていけば、その分だけ思いっきり笑う事ができる。笑っていると、それが誰かの笑顔につながる。なげやりになっている人がいたら、自分自身や人生を一度信じてみてほしいです。


岡嶋かな多:1984/7/7
東京を中心に活動するバンド、Acushlaのボーカルとして活動する傍ら、作詞家として安室奈美恵、Hey! Say! Jump!、黒木メイサ、超新星、Do As Infinity含む数多くのアーティストに歌詞を提供。さらにはソロシンガーとして、レディーガガパンクトリビュート、J-POPカバー伝説、人気ゲームBeatmania等、多くのプロジェクトに参加。SMAP、堺正章、MAY’S等、多数のアーティストのライブやレコーディングのコーラスも務める。幼少時、アメリカで過ごした経験を活かした英語通訳、MC、ラップメイキング、ラジオパーソナリティにも定評有り。
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