今月1日、関西電力大飯原発が再稼働した。東日本大震災による福島第一原発事故以降で停止していた原発の再稼働は初めて。これを受けて、全国各地で再稼働に対する抗議活動が起きた。
福井県おおい町では大飯原発までの道路を市民が封鎖し、深夜まで警官隊とのにらみ合いが続いた。デモ活動の模様を放送したユーストリームでは、約40万人に見られたとされている。
大飯原発は敷地内の断層図が不備のまま、原発の安全性評価かが進んでいることが明らかにされている。関西電力は大飯原発の再稼働に際し、敷地内に掘ったトレンチ(調査溝)の南側の断層図だけを原子力保安委員会に提出。「F6断層」と呼ばれる脆弱な破砕帯が見つかっている北側の図については、省略していた。
これに対し、国際環境NGO「FoE Japan」をはじめとする9つの市民団体は6月26日、大飯原発の敷地内の断層の再調査を求める要望書および署名1万663筆を北神圭朗経済産業大臣政務官に提出。北神政務官は「懸念は理解した。大飯原発の再稼働は枝野大臣の判断事項であるが、要請の内容、専門家からそういう指摘があったことはしっかりと伝える」と答えるにとどまった。
東洋大学の渡辺満久教授(変動地形学)は6月28日、原発敷地内を南北に横断する「F6」と呼ばれる断層について「掘削調査は不可能ではない」と結論付けている。
F6断層は原子炉の直下を通ってはいないが、重要構造物の一つである非常用取水路がF6断層を横切っており、渡辺教授は「F6破砕帯(断層)が活断層と認定された場合、3・4号炉の使用は不可能となる」と指摘している。
■再稼働に対して著名人からも反対の声
ソフトバンクの孫正義社長は7月1日、京都市内で記者の質問を受け、「千歩譲って、需要がピークの夏限定なら理解できなくもないが、今の段階で運転を継続するのはまったく理解できない」と批判した。
脳科学者の茂木健一郎氏は自身のツイッターで、再稼働反対デモを養護する発言をした。『大飯原発前の、「色とりどりの服を着て、太鼓を叩いて踊っている人たち」の文化と、「制服を着て、一列に並んで立っている人たち」の文化のどちらが好きかと言えば、私は圧倒的に前者の方が好きだ』(7月1日、茂木氏のツイッターから)
■原発反対デモを続けた女子大生の叫び
去年の東日本大震災から原発抗議活動を続ける関口詩織さん(国際基督教大学1年)は、「それでも声をあげていく」と話した。関口さんは500人弱が参加した浜岡原発停止を訴えるデモ活動や、経産省前での10日間のハンガーストライキを行ってきた。今回も6月29日から、おおい町に入りデモに参加していた。
デモ中、警察に原子力反対の要望を訴えたが、「気持ちはわかるけど、法律に従って抗議してください」の一点ばりだったという。ヘルメットやこん棒を持った機動隊にも疑問を感じたという。
「私たちは無力です。声をあげているだけで、暴力的に訴えているわけではないです。少し抵抗すると、すぐに公務執行妨害として強制的に排除されてしまいました。皆、同じ一人の人間なのに、本当に意味がわからない」と話す。
再稼働が決まったがデモ活動を続けていくという。
「結局デモでは何も変えられないと思われてしまったかもしれないが、これからも私は声をあげていく。なぜなら、私たちにできることは声をあげることしかできないから。政治家も警察も私たちと同じ一人の人間として声を聞いてほしい」と訴えた。(オルタナS副編集長=池田真隆)