足立区の落ちこぼれがバングラデシュで教育革命
きっかけは失恋
19歳の時、失恋を機に一人前の男になってやる!と決意し、その第一歩として国際協力の本を読みあさった。そして運命の本『グラミン銀行を知っていますか』と出会う。グラミン銀行とはバングラデシュで貧困層の人々に低金利・無担保で融資を行っている銀行であり、総裁を務めるムハマド・ユヌス氏は2006年にノーベル平和賞を受賞した。
それまでチャリティや援助に違和感を抱いていた税所くんにとって、貧者へのソーシャルビジネスという発想はとても衝撃的だった。直感のままに著者の坪井ひろみさんに問い合わせ、本を読んだその日に夜行バスで坪井さんが勤めている秋田大学に向かった。そして坪井先生からグラミン銀行やユヌス氏の話をたっぷりと聞き、一か月後にはバングラデシュへ経った。
テクノロジーで革命を
グラミン銀行の支店がある小さな村を訪れたとき、パソコンを使っている人に気がついた。こんな所でパソコン?!と驚いたが、村でも裕福な層にはIT機器を利用する人が増えてきたことを知った。「テクノロジーを使って貧困層の人々に何かできるかもしれない」とITの可能性を模索しているうちに、高校生の時に通っていた東進ハイスクールを思い出す。そこは一流講師による授業を収めたDVDで学ぶ予備校で、バングラデシュにもこの映像教育モデルを導入しようと思いついたのだ。
バングラデシュは日本と同じくらい受験戦争が激しく、予備校の費用はとても高額なため裕福な家庭の子供しか通うことができない。つまり、お金がないと大学に行けないのだ。そこで、成績は良いが塾に通えない高校生を対象に映像授業を行うプロジェクトe-Educationを立ち上げ、日本の東京大学に当たるダッカ大学への合格者を見事に輩出した。
22歳の社会起業家
一体どうして普通の男の子にそんなことが出来たのか。世界を変えたいと思っても実際に行動し結果まで出す人は少ない。その情熱はどこから来るの?と尋ねると、生まれ育った足立区へのコンプレックスが原点だという。小さい頃からあまりいいイメージのない地元を変えたいと思っていた。そして今も、純粋に世界を良くしたいという思いが原動力のようだ。
現在は日本とバングラデシュを行き来しながら早稲田大学に通っている税所くん。同じ学生にメッセージをと頼むと、こう返事がきた。
「世界はおもしろい。外へでよう!」
今後はプロジェクトを拡大していくことが目標だ。彼の挑戦はまだまだ続く。