日本で初めてクラウドファンディングが誕生してから一年、爆発的な成長を続ける要因は何か。2011年3月、クラウドファンディング「READYFOR?(レディフォー)」を立ち上げた米良はるか氏は「時代との親和性」と見る。(聞き手・オルタナS副編集長=池田真隆、オルタナS編集部員=堀川雄太朗、 写真・オルタナS副編集長=大下ショヘル)

クラウドファンディングと現代の親和性を話す米良さん



人のつながりを生み出したい

——2011年3月の立ち上げから、総支援者数10000人、成功したプロジェクト数90件、達成総額8000万円にのぼります。2011年12月までは、総支援者数1000人、成功したプロジェクト数30件、達成総額は1000万円でした。今年に入って急激に伸びていますが、その要因は何だと捉えていますか。

米良:個人の想いに共感して多くの方から少しずつお金を集める、クラウドファンディングを使ったファンドレイジングの成功事例が増えてきたことで、その可能性に気づいて頂けていることが良かったと捉えています。

多くの資金を集めることができた例としては2つあります。1つは、2012年1月に成功した「ワタノハスマイル」というプロジェクトです。このプロジェクトでは420万円を集めることに成功しました。ツイッターやFacebookなどで大きく拡散され、プロジェクトと同時にたくさんの方に「READYFOR?」自体、そして「READYFOR?」のコンセプトを認知していただくことができました。

そして、もう一つは、3月に成功した「陸前高田市の空っぽの図書室を本でいっぱいにしようプロジェクト」です。こちらは国内史上最高額の820万円を集めることに成功しました。

認知度がまだ低かった当初は資金調達額も多くはなかったのですが、これらの成功事例でクラウドファンディングの可能性に対する捉え方が変わったと実感しています。また個人だけではなく、NPOや株式会社など、団体の形態問わず資金調達の手段として、「READYFOR?」が活用されるようになってきました。

——東北関連のプロジェクトは成功する確立が高いように思います。

米良:東北でのプロジェクトは成功率が高いです。これは、東北の方々を応援しようという気持ちだけではなく、東北には、人やアイデアも含め、未来に対してのアクションが集まっているからだと思います。

クラウドファンディングでの復興支援活動には、その他の地域でも今後の街づくりなどの参考になるのでは、と思っています。

例えば、先ほどの陸前高田の図書室プロジェクトでは、達成後、支援者の方々が毎週のように陸前高田の図書室に遊びに来られているそうです。支援者は自分のお気に入りの本にお名前を入れて図書室に寄付できる仕組みだったので、寄付した本がどのような方に読まれているのか楽しみにされていました。

このようにして、プロジェクトをきっかけに、支援者と実行者には新たな関係性が生まれています。そして、支援者は次の実行者になるかもしれない。その時、今度は支え合うことが出来る。「READTFOR?」を通して、個人が想いで繋がり、新しいコミュニティが生まれる、そんな仕組みになっていけばいいと思っています。そこに力を入れていきたいですね。

個人が世の中を変える時代



——クラウドファンディングの勢いは今後どのようになっていくと見ていますか。

米良:やはり「個人」の可能性が拡がっていると感じています。これまでの企業や団体の中では見えなかった「個人」の想いやアイデアが、インターネットやSNSを使って発信できるようになりました。

個人の時代だからこそ、個人がしたいことを発信し、共有できるサービスである「クラウドファンディング」は伸びていくのではないかと見ています。個人が個人同士を支え合う循環を生み出していきたいです。

——個人同士がお互いを支え合う仕組みを作り上げたいのですね。なぜでしょうか。

米良:個人の挑戦は孤独です。また日本では、変革を起こすアクションに対して時に風当たりが冷たい場合もあります。さらに、当然ですが、どんなことも簡単には成功しません。

革新的なことを成し遂げようとするほど、「それって出来るの?」と聞かれ、自信が持てなくなってしまうこともあります。そんな時、「がんばって」というみんなからの応援の声が、背中を押してくれるかもしれない。そして、そういった応援の声や仲間と出会うきっかけを提供できる仕組みが、クラウドファンディングです。

たとえ、掲載したプロジェクトが成功しなかったとしても、それは失敗ではありません。そのとき、「なぜ成功しなかったのか」、「他のプロジェクトとは何が違うのか」を考えるきっかけが生まれます。

そして、支援者からのアドバイスも頂きながら、次はプロジェクトの内容を改良し、進化させていくことができます。事実、「READYFOR?」で2回掲載されたプロジェクトは、全て2回目の方が多くの金額を集めているのです。

自分の意見を発信し、どのように反応されたかを見て、改良していってほしいです。この流れを繰り返すほど、絶対に良いものに仕上がっていきます。

「READYFOR?」では、誰もがやりたいことを実行できる世界を目指して、みんなと一緒に夢を叶えるお手伝いが出来れば嬉しいです。


・「READYFOR?」https://readyfor.jp/
・フェイスブックページhttps://www.facebook.com/readyfor

米良はるか/1987年生まれ。2012年慶應義塾大学メディアデザイン研究科修了。2010年スタンフォード大学へ留学し、帰国後、大学時代から関わっていたウェブベンチャー、オーマ株式会社にて取締役に就任。2011年3月日本初のクラウドファンディングサービスREADYFOR?の立ち上げを行い、NPOやクリエイターに対してネット上で資金調達を可能にする仕組みを提供している。World Economic Forumグローバルシェイパーズ2011に選出され、日本人史上最年少でスイスで行われたダボス会議に参加。Twitter: @myani1020 Facebook: haruka.mera


*本記事は2012年10月に掲載されたものであり、年齢や日時は全て当時のものです。