高齢化社会となる日本を、ユニバーサルデザイン先進国にすることへ命をかける23歳の若者がいる。垣内俊哉さんだ。立命館大学在学中に友人とミライロ(大阪府・大阪市)を立ち上げた。先天性の骨形成不全症という難病を抱え、幼少期から車椅子生活を送る。活動できるタイムリミットは45歳までと診断されている垣内さんの決意を聞いた。(聞き手・オルタナS副編集長=池田真隆)

垣内俊哉さん


求められるさりげないフォロー


——企業や大学、行政と連携して、ユニバーサルデザインの先進国を目指しています。

垣内:バリア(障がい)をなくす「バリアフリー」ではなく、バリア(障がい)をバリュー(価値)とする「バリアバリュー」な社会を目指しています。

諸施設でのバリアフリーマップの作成や接客研修、ユニバーサルデザイン観点からの施設点検を行っています。また、障がいがある方の教育支援なども行っております。

——大学在籍中に起業した2009年こそ売上がほとんど無かったそうですが、3年目の今期は5000万円ほどを見込んでいるそうですね。

垣内:社会が高齢化し、外に出て行く障がい者が増えていることが背景にあります。

例えば、娯楽施設でもファミリー層だけを狙うのではなく、高齢者、障がい者などもターゲットに定めています。冠婚葬祭でも、東日本大震災以降は家族と過したいというカップルが増えておりますので。

——このような活動は、NPOや障がい者団体が主に行っていました。しかし、垣内さんはNPOの法人格を取らずに、会社を設立しました。それはなぜでしょうか。

垣内:私たちはビジネスとして行わなければいけないと感じています。ボランティアやお情けで行っていると捉えている企業が多いので、高齢者や障がい者の市場価値を高めて、ビジネスとしてフェアに社会を変えていきたいのです

——接客研修では、「さりげないフォロー」を教えているとのことですが、具体的にどのようなことでしょうか。

垣内:選択肢を押し付けるのではなく、提示することです。例えば、車椅子の人が一人で移動していたら、ホテルのスタッフや駅員などで突然後ろから「押しますね」と言ってくる人がいます。しかし、私は車椅子バスケットボールの選手だったので自分一人の力でこげるわけです。

しなければいけないのは、「何かお困りのことはありますか」と聞くことです。
車椅子の人は一人ひとり事情が異なるのに、障がい者だからこうだと決めつけてはいけません。まずは、目の前の人に何をしてほしいのか聞くことが必要です。それが、さりげないフォローです。

——ミライロを起業したのは2009年、垣内さんが立命館大学2回生のときです。起業しようと思った経緯を教えてください。

垣内:車椅子で生きていくことへの劣等感から起業しようと決意しました。16歳のときに、大きい手術を受けて、過酷なリハビリも行ったのですが、歩けないとわかりました。そのとき、車椅子に乗る自分が嫌で嫌でたまらなく、高校も休学し、自殺を試みたこともあります。

病室で、どうしたら自分を好きになれるのか、障がいを忘れられるようになれるのか、そんなことを考えるようになりました。そのようなブラックパワーから生まれたのが起業するという考えでした。自分で自分を否定し続けた中でのシフトでしたね。

大学2回生のときに、同級生の民野剛郎(同社副社長)と一緒にやることに決め、2009年の5月28日に動き出しました。

もともとは障がいの克服のための起業でしたが、将来的なことを考えるとやっておくべきことがたくさんあることがわかりました。私は直接親の介護ができませんので、せめて良い施設に入れてあげたいと思っておりますし、おそらく遺伝する子どものためにもバリアフリー教育を受けさせなくてはいけません。また、民野を始め従業員が9人ほどおりますので、彼らの生活のためにも稼がなくてはいけません。

何のために時間を使っているのかが明確になったときに、人は強くなれると確信しましたね。これから先どうしたいのかが見えなかったときに、誰に恩返しをしたいのかを考えたら、ぼんやりと見えてきました。

出発点はエゴでしたが、民野や周りの仲間のため、そして、社会にいる障がい者のためになっていると分かったときに、ぼくらはさらに強くなりました。


後編に続く⇒【コンプレックスである車椅子の自分をどのようにして受け入れたのかに迫る


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