若者の社会貢献熱を加速させているものは何か。世間では、東日本大震災により価値観が変わり、社会性のある行動が芽生えたと、よく言われている。人々が「つながり」を求めるようになり、日本漢字能力検定は2011年の世相を表す漢字を「絆」とした。

東日本大震災が大きなきっかけになったことは間違いないが、それ以前にある要因が重なり、社会貢献熱を加速させていると筆者は推測する。

それは、「かっこいい」概念の変化である。NTTアドの調査では、高度経済成長期を過ごした中高年世代が20代時に抱いた「かっこいい」と、今の20代が抱くそれは違うことが分かった。(オルタナS副編集長=池田真隆)

中高年世代が20代時に抱いたイメージは、「成り上がり」「上昇志向」「一匹狼」など、「強さやたくましさ」を表すものが「かっこいい」基準だった。一方、今の20代が抱くイメージは、「やさしさ」「誠実さ」「仲間思い」など、「人当たりのよさ」が「かっこいい」基準になっているのだ。

当時、若者たちが見ていたアニメのヒーローを例にしてもその傾向が分かる。「巨人の星」や「アタックNO.1」など、逆境から立ち上がるスポ根もののが流行していた当時と比べて、今は「ポケットモンスター」や「ワンピース」のように、一人ではなく、仲間をつくり、みんなで世界を変えていく物語が主流だ。

「みんなで」という発想が時代を表すキーワードとして出ている。コワーキングスペースやシェアハウス、クラウドファンディングの盛り上がりが代表例だ。社会貢献プロジェクトに特化したクラウドファンディングサイト「READYFOR?(レディフォー)」は2011年からリリースし、これまでの流通総額は1億8000万円以上だ。

人とのつながりを求めて活動する反面、「一人で生活することが経済的につらい」という社会的背景もある。若者たちが生きていく術として、「助け合い」が必要だと感じ、生まれてきたサービスだ。もちろん、中高年世代の文脈からすると、家や物、お金、を「分け合い」ながら生きていく若者たちが新種のように見えることもあり、価値観のギャップが生まれる。

価値観のギャップは、「社会貢献」に対しても同じである。誠実な仲間たちとともに進んでいくことを、「かっこいい」とする者と、一人で逆境に負けず、成り上がっていくことを「かっこいい」とする者では、ボランティア活動へ感じる距離感に差がある。

筆者は、社会変革活動をする若者たちの取材を通して、なぜ社会貢献の道を選択したのか聞いてきた。「人のため」に動くのではなく、「かっこいい」から自然と動くという若者が多いことに気付いた。「かっこいい」という概念が時代に合わせて変化し、「エシカル」に近づいてきているのだ。

2012年にマーケティング会社のデルフィスが実施した「エシカル実態調査」では、エシカルの認知度は13%(2011年は11%)であった。ポテンシャル層として期待されるのは、認知度が最も高い19%の60代以上の女性と、なんと10~20代の男性であった。

百貨店などを中心に、エシカルファッションの催事が行われていることで、エシカルと触れる回数は比較的に女性が多いとされる中、青年期男性のエシカル認知が高いことは今後の社会への希望である。

オルタナSでも、敵を倒すのではなく、仲間にしていくコンセプトをゲームを通じて体感したポケモン世代の「かっこいい」を社会に発信していきたい。(オルタナS副編集長=池田真隆)