東北で働くことを希望する個人向けの説明会「WORK FOR 東北」が26日、開催された。専門的知見や企画力を有する人材を東北に送り、復興を加速させていくことを狙う。会場には、社会人を中心に約30人が訪れ、岩手県陸前高田市の久保田崇副市長らが、復興現場に求められる人材について説明した。(オルタナS副編集長=池田真隆)

登壇した、陸前高田市の久保田副市長=26日、東京虎ノ門の日本財団で

主催団体は、「WORK FOR 東北」(復興人材プラットホーム構築事業)事務局で、協力に復興庁や日本経済団体連合会が着く。同団体は、復興地が必要とする人材を企業などから現地に派遣する事業を行う。復興のために必要とする人材を調査し、公式ウェブサイトで情報を発信する。

日本財団が全体統括を行い、一般社団法人RCF復興支援チームとNPO法人ETIC.(エティック)が人材マッチングのコーディネートを行う。

当日行われた説明会には、2011年8月に霞ヶ関から岩手県陸前高田市にきた久保田副市長や、今年4月、エティックが実施する東北派遣事業「みちのく仕事」を通じて、NECから福島県浪江町の復興推進課で働く陣内一樹氏ら5人が登壇した。

NECから福島県浪江町で働く陣内氏

■東北で得た、「現場感覚のニーズ」

陸前高田市は、311の津波被害によって、世帯数9000弱のうち全壊3159戸を含む3368戸が被災した。復興の司令塔となる市役所庁舎も全壊し、市職員295人のうち68人が犠牲となった。現在は、高台のプレハブ庁舎で作業を行うが、人員不足のため2013年度は全国各地から89人の派遣応援職員が来た。

震災から2年半以上が経過したが、仮設住宅の課題は解決されていない。市内約9000世帯のうち入居しているのは、約2200世帯。仮設住宅では、子ども部屋がなく、勉強に集中できないこと、壁が薄く東北の冬の厳しさに耐えられないこと、さらには、いつ仮設住宅から出られるのか見通しがたたない不安がある。

久保田副市長は、「2014・15年が最も人材が求められることになる」と話す。同市の計画では、2014年に公営住宅や消防庁舎、高台宅地などを一部完成させ、がれき処理にも目処をつける予定だ。翌年の2015年には、高台への住宅再建、中学校再建、市街地形成などを開始する。全ての仮設住宅を解消する震災復興計画の終期は2018年を目指す。

同市が求める人材は、2人。防災学習を念頭に置いた修学旅行・社員研修などの誘致のためのマーケティング戦略立案を担当する商工観光課と、住宅再建支援業務を行う建設部にそれぞれ1人ずつ。ともに、前職で経験のある者を求める。

久保田副市長も311後、中央官庁から陸前高田市に来た。静岡県掛川市に生まれ、京都大学を卒業し、2001年に内閣府入りした。

これまで東北に縁はなかった。地方公務員になることも想像していなかったが、同市での活動に刺激を受けていると話す。「住民との距離が近いので、現場感覚のニーズに触れられる。中央にいては得られない濃い経験をしている」(久保田副市長)。

久保田副市長は復興にかかわることはチャンスととらえる。「復興は、インフラを修復するだけでなく、住民の活気も取り戻してこそ実現できる。近い距離感で人と向き合う事業ができることは、新しい視点に気付くチャンスである」。

WORK FOR 東北