――2030年のビジネスモデルにおける成功とは何でしょうか。
齊藤:従来のビジネスは、1を10に、10を100に拡大していくものとされていました。しかし、革新者たちは必ずしもスケールを追求していません。1のままや、10のままでもいいと考える経営者が少なくない。スケールするには標準化やマネジメントが必要です。その過程でビジネスは変質して繰り返し作業によるつまらないものになってしまうことを革新者たちは気付いているのだと思います。
商品やサービスはコモデティ化しないと拡散していかないのは真理ですが、そのプロセスにおいて、モノやサービスが単調化していくことも真理なのです。
――未来創発キャンパスに参加する若者へのメッセージをお願いします。
齊藤:単純な金儲けのためだけにビジネスをする経営者よりも、従来の常識と違う切り口でビジネスをしている革新者に憧れを抱く若者に来てほしい。
現代の若者たちは不確実、不安定な経済の中で生き抜かねばなりません。悔やんだり、嘆いたりしてもどうしようもない。昔は違いました。高度成長期の中で働く目的も明快でした。人もたくさん必要だったので、簡単に首にはなりませんでした。しかし一方で上司の言うことは絶対であり、つべこべ言わずにやるしかなかった。
みなさんはもう一度昔のような社会に戻したいのですか、と問いたい。自由な時代になったからこそ、既存の常識に捉われずに、イノベーションを起こすことにチャレンジしてほしい。
デジタルネイティブ世代と言われ、モノから人へ関心が移った若者が持つ着眼点に期待しています。今後は、モノから、人と人の間に付加価値がシフトすると思います。若者たちで、新しい付加価値や新しい働き方をどんどんつくっていってほしいです。
【齊藤義明(さいとうよしあき)】
㈱野村総合研究所 未来創発センター2030年研究室 室長
NRIアメリカ ワシントン支店長、コンサルティング事業本部戦略企画部長などを経て、2012年9月に2030年研究室を立ち上げた。政策や企業経営コンサルティングの現場でこれまで100本以上のプロジェクトに関わる。専門は、ビジョン、イノベーション、モチベーション、人材開発など。現在、ダイヤモンド・オンラインで「2030年のビジネスモデル」のコラムを連載中。
・「NRI未来創発キャンパス2013」大阪(7月8日)・東京(7月9日)へはこちらから
【オルタナSへの取材依頼・ご質問・ご相談などはこちらへ】
【オルタナS特派員への登録はこちらへ】