夢の実現性を競い合うコンテストみんなの夢アワード5(主催:公益財団法人みんなの夢をかなえる会)が2月23日開催する。予選を勝ち抜いた7人のファイナリストは日本武道館で自らの夢についてプレゼンする。本番まで残り1カ月を切ったなか、オルタナSではファイナリストたちへインタビューを実施。「なぜその事業を行うのか」という共通の質問を問いかけた。

子どもたちから漁業を「かっこいい」と思われる職業にするため活動している男がいる。伝統を受け継ぐ後継者を輩出するため、他の浜の若手漁師たちを巻き込み、海産物の養殖・販売を手がける会社を設立した。日本の漁業を変えていきたいと起業したきっかけは、漁師をやめた親友にある。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

浜の声を背負い武道館に立つ阿部さん

浜の声を背負い武道館に立つ阿部さん

その男とは、宮城県石巻市北上町十三浜の若手漁師・阿部勝太さんだ。阿部さんが起業したきっかけは、親友が漁業をやめたことにある。その親友は、東日本大震災による、風評被害・漁具を借りるための2重ローンなど経済的な問題で、やめざるを得なかったという。給料が安定して、東北で需要がある土木・建築業に就いている。

しかし、今でさえ土木の需要はあるが、その親友はこうつぶやいた。「10年後、建築・土木の需要がなくなったら、おれらはどうなるのか」。その言葉を聞いたとき、阿部さんは、自分の力で漁業を稼げるものに復活させたいと思った。

震災後、ほかの浜の若手漁師と話す機会も増えた。そこで出る話題は、「後継者がいない」「稼げない」「先が不安」など、どこも同じ課題を抱えていた。ならば、一緒になってこの状況を変えていこうと、震災が起きた年の11月に、会社を立ち上げた。その会社では、自分たちで育てた海産物を、自分たちで販売している。

「稼げる会社をつくってくれたら戻る」――阿部さんが幼馴染から言われた言葉だ。この言葉を胸に、阿部さんは挑む。

実は、阿部さんは、漁師は好きでも嫌いでもなく、長男だからという理由で仕方がなく継いだ。でも、「このままの自分じゃ、誰も変えられない」と自分の中で意識を変えた。子どもたちが憧れる存在になるため、漁業にやりがいを見出す。

漁業は伝統。伝統を受け継ぐためには、短期間ではできない。平均年齢65歳の日本の漁業を変えるためには、「若手世代のおれらが動かないと終わる」と言い聞かせる。武道館当日には、おれの声ではなく、おれらの声を届けると意気込みを語った。浜の代表として、挑む。

お知らせ みんなの夢アワード5はこちらへ


[showwhatsnew]