ビズリーチは14日、同社初となるNPO経営幹部への転職マッチングイベントを開催した。培ったビジネススキルを社会的課題の解決へ生かしたいと、ビズリーチ会員70人が参加した。事前調査では、約9割が「NPOに興味あり」と印象に関しては追い風となる結果が出ていたが、その裏側には決断することへの壁も高く、いかにして乗り越えていけるかが課題となる。(オルタナS副編集長=池田真隆)

登壇したテーブルフォーツーの小暮真久代表

マッチングイベントは、同日にビズリーチがNPO経営幹部を公募する特設ページを開設した記念に開催された。今回、経営幹部を公募したのは、グローバルに活動を展開する事業型NPO3団体。先進国の肥満と途上国の飢餓問題解決を目指すTABLE FOR TWO International(テーブルフォーツー)、新興国へ社員を派遣する「留職」のクロスフィールズ、教育格差に取り組むTeach For Japan(ティーチフォージャパン)だ。

参加者の平均年齢は、34歳。大手日系金融機関、コンサル、商社に勤め、8割以上がビジネス英語以上の学力を持つビジネスプロフェッショナルだが、登壇したNPO3団体の代表も同じキャリアを経ている。テーブルフォーツーの小暮真久代表とクロスフィールズの小沼大地代表は、マッキンゼー出身で、ティーチフォージャパンの松田悠介代表はプライスウォーター出身である。

■「きっかけ」が「きっかけ」を生む

会場からは、質問が相次いで挙げられた。ビジネスモデルについての質問もあったが、代表個人への質問も多く挙がった。「やりがいはどこにあるのか」「会社を辞めて、NPOを立ち上げたきっかけは」「辛いことは」など。

参加者の一人で、都内のコンサル会社に勤務する伊藤淳さん(33)は、NPOに転職する決め手として、NPOを立ち上げた「きっかけ」を知りたいと話す。「(NPO代表も)経済性や組織体制などの不安要素はあったはずだが、それを乗り越えたきっかけを知りたい」。

伊藤さんがNPOに関心を持った背景は、ライフワークと仕事の達成感が影響している。ボランティアで大学生へのキャリア相談を行っており、社会貢献活動に抵抗がなかった。さらに、新卒入社したときに掲げていた目標を成し遂げたので、新たなやりがいを探していた。

■NPOは、本気で社会を変えたい証

今年11月初旬、ビズリーチ会員1289人に行った事前調査では、「ビジネス経験をNPOに生かしたい」と回答した人は85%に及んでいた。しかし、会場では経済性や労働環境に対して不安視する声は少なくなかった。

ティーチフォージャパンの松田代表

松田代表は、「キャリアを変更することは、個人の問題なので、家族を含めて自分自身とじっくりと対話してほしい」と話した。松田代表は体育教師だったが、将来に希望を持てない子どもたちが多くいる現状を変えたく、教師を辞めハーバード大学に留学し、リーダーシップを勉強した。

アメリカ留学中に出会った、ティーチフォーアメリカの仕組みに衝撃を受け、日本に導入した。

クロスフィールズの小沼代表の説明中、なぜ株式会社ではなくNPOを立ち上げたのかという質問が出た。小沼代表は、「本気で社会を変えたい証」と答えた。「NPOとして活動することで、迫力が違う。金儲けではなく世の中を変えたかったから」。

クロスフィールズの小沼代表

■3年以内に、「NPOへの転職が当たり前」

「NPOで働くやりがいは何か」――テーブルフォーツーの小暮代表は、「マッキンゼーでは出会えなかった人たちと会えたこと」と答えた。各国の首相や著名人から大学生まで、ソーシャルな活動をしているからこそ、つながれたという。

NPO法が日本で成立したのは、今から15年前の1998年。これまで5万近くの団体が生まれたが、年間収入500万円未満が半数を占める。一方、アメリカには収入600億円規模のメガNPOが存在する。このような団体は、どうすれば日本にも生まれるのだろうか。

小暮代表は、「アメリカではビジネスプロフェッショナルたちが、NPOなどのソーシャルセクターへ転職する流れが活発」と話す。「日本でもその流れを起こすために、ぼくらがロールモデルとならなくてはいけない。今はまだ(NPOへの転職は)少数だが、3年以内には、NPOへの転職が当たり前となる社会にしていきたい」と意気込む。

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