地域外の人材を受け入れ、地域の活性化を目的とする「地域おこし協力隊」は2009年に制度化された。人口減少が進む中、地域おこし協力隊はどのような方法で地域を盛り上げているのか。武蔵大学松本ゼミは地域おこし協力隊を受け入れている熊本県上天草市企画政策課を訪れた。(武蔵大学松本ゼミ支局=齋藤優樹・武蔵大学社会学部メディア社会学科3年)
上天草市は、2004年3月に大矢野町、松島町、姫戸町、龍ヶ岳町の4町が合併して誕生した市である。合併後の最初の2005年に行われた国勢調査では人口が約3万2千人、27年に行われた調査では約2万7千人と10年間で17%の人口が減少している。その中でも同市の離島である湯島は島民300人のうち約6割が高齢者である。
地域おこし協力隊は上天草市では2013年の7月から採用を開始し、現在は教良木地区の農業振興担当が1名、湯島の観光振興担当が2名の計3名の協力隊員が着任している。
現在の活動内容は島おこし全般で、着任時より地域のまちづくり団体とともに6次産業化のための農水産物加工場建設に取り組み、2年目の現在は海産物の加工と商品化を実行中だ。
耕作放棄地を開拓し、湯島大根などの島の特産物の栽培研究や、イベントや販売PRを行いブランド向上に努めている。他にも、猫島ということで猫ブームもありメディアに取り上げられることが以前よりも増え、観光ツアーなどの受け入れも今後力を入れていく。
地域では空き家が増加しているということも大きな問題となっている。上天草市では大学の建築学科の研究室が5年前から空き家の増加原因を湯島で研究しており、その空き家を市からの助成金とクラウドファンディングを利用し、島民と協力隊で改修して観光の拠点となる「まったり休憩所」をプレオープンした。今後の運営は地域団体と協力隊が担っていくそうだ。
2017年度より地方創生交付金を活用し、湯島で生きる島活応援事業を実施している。その中で湯島を舞台として俳優の平田満さんを主演にした25分ほどの短編映画を製作しPRに使用したり、恋する灯台プロジェクトに認定されている湯島灯台の整備、新たにフォトウエディングの聖地を目指すためその道のプロにスポットを選定してもらうなどのユニークな取り組みも行っている。ロバートの秋山竜次さんのクリエイターズ・ファイルと上天草市がコラボし魅力を発信したことによって認知度がさらに上がった。
今後の課題としては地域おこし協力隊として上天草市に来た方に定住してもらうために仕事をして収入を得て独立していくビジョンを立てることが重要だ。
上天草市のユニークで面白い取り組みが分かった。湯島と教良木地区は熊本県の中でも成功モデルとなっているので、別の地区や他県のロールモデルとなれば地域もさらに盛り上がりを見せるだろう。