「古瀬くん、文部科学省と一緒にお仕事しませんか?」
この短い一通のメールが、僕の人生を大きく変えたのかもしれない。このメールが来たのは、2012年の秋。当時、立教大学大学院でお世話になっていた萩原なつ子先生からだ。
僕は、ちょうど、その時期、2008年に初めて体験した「ワールド・カフェ」という対話の手法についての修士論文を必死で執筆していた。もともとは、「ただ単純に、対話って面白いな!」という想いで、好きで、好きで、ワールド・カフェを活用したイベントを学部生時代にたくさん開催していたのが契機だ。大学4年生の時には、全国47都道府県をママチャリで旅しながら、全ての都道府県でワールド・カフェを開催するプロジェクトを実施していたくらいだ。
そして、気づけば、100回を越える程にワールド・カフェをやっていた。気づけば、卒業論文も修士論文も「ワールド・カフェ」をテーマに執筆することになった。
気付けば、専門性も高まり、2012年頃から、少しずつ、「ワールド・カフェを活用したいんだけど、プログラム・デザインとファシリテーターをやってほしい」と頼まれるようになっていった。
そんな時、このメールは来たのだった。
そして、そのメールの数日後、僕は、直接、萩原先生と会って、いろんな話をした。その時だった。忘れもしない。先生は、サラッと、僕に、こんな言葉を発したのだ。
「さっさと起業しちゃいなさい!あなたは、頼まれる人なんだから!」
この言葉は、なんだか、“耳から”というより、直接、心に直通ですぅーっと入ってきて、すとんと腹に収まった感じがあった。そして、その数週間後、地元の税務署に「開業届け」を提出している自分がいた。まさに、僕にとって、この言葉は、「背中を押してくれた言葉」だったのだろう。尊敬している恩師からの一言。タイミングは、他でもなく、今なのだと直感させてくれた。
そして、あれから、ちょうど1年が経つ。現在は、「古瀬ワークショップデザイン事務所」という屋号で、なんとか、フリーランスの「ワークショップデザイナー/ファシリテーター」として、やっていけている。
改めて、思うことは、結局は、やるか、やらないか、なのだということ。背中を押されても、足を踏ん張って、立ち止まる人もいる。だけど、少なくとも、僕は押されるがままに、飛び込んだ。突っ込んだ。やってみた。そしたら、世界が開けた。道が開けた。
きっと、なんでも、そんなもんなんじゃないかと、僕は思う。(寄稿・古瀬ワークショップデザイン事務所代表 古瀬正也)
古瀬正也:1988年生まれ。さいたま市在住。2008年、「ワールド・カフェ」という話し合いの手法を体験し、対話に興味を持つ。2010年、全国47都道府県でワールド・カフェを開催し、約1200名が参加。2011年、駒沢大学グローバル・メディア・スタディーズ学部卒業。2013年、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科修了。社会デザイン学修士(MBA)。現在、フリーランスのワークショップデザイナー/ファシリテーターとして、全国各地で活動中。