法政大学を卒業し、移住した岩手県陸前高田市広田町では三井俊介さんと同世代に当たる20代が少なかった。広田町の人口は3600人、その内18~29歳は290人ほどでわずか8%。東京ではパソコンができる若者は珍しくないが、ここでは希少な存在だ。「同世代がいない」ことが、専門性につながった。(オルタナS副編集長=池田真隆)

広田町でのパソコン教室の様子

三井さんは移住した当初、ボランティアコーディネーターのほかに事業として、地元住民を対象としたパソコン教室を開催していた。教わりに来るのは、平均50代の主婦たち。子どもが持っているパソコンを趣味として使いたいという思いで受けにくる。

もともと、パソコン教室を開催したのは、ある男性との出会いからだ。その男性は事務関係の仕事をしており、パソコンを使うことに慣れていた。リタイアした今、パソコンを使ってこの町に貢献したいと三井さんに話を持ちかけた。

これまでに、広田町の人口の2%に当たる60人が受講している。1回の授業は1時間半~2時間で、授業料は500円。月に2000円だ。1教室には15人ほどが出席し、週に4回開いている。教える内容は、メールの使い方のほかに、ワード、エクセル、パワーポイントなど基本的なことが中心だ。

三井さんは、「東京にいたらパソコンを使える若者はたくさんいるが、広田町では、それが強みとなる」と話す。外部からの移住者が事業を生み出していくには、「自分のできることから、地元の人と交流していくこと」が大切だと言う。

「アイデアはすぐに思いつくが、それだけでは周りの人を巻き込めない。ゆっくり人と話し合って、その中で自分にできることを探していかければいけない」