いま一風変わった「図書館」が全国に増えている。個人宅やカフェ、ショッピングモールなどを舞台に、地域住民が本を持ち寄る。これは「まちライブラリー」といわれる活動で、700カ所に広がっている。(武蔵大学松本ゼミ支局=大場瑞希・社会学部メディア社会学科2年)
今回話を聞いたのは、もりのみやキューズモール(大阪府大阪市)にあるまちライブラリーの「わたしの図書館ミルキーウェイ」館長の石田通夫さん、一般社団法人まちライブラリー事務局で働く小野千佐子さん、「まちライブラリー@もりのみやキューズモール」司書兼マネージャー代理の並河真次さんの3人。
まちライブラリーの蔵書は、原則、地域住民らから提供されている。その際、本の持ち主はその本にどのような思い入れがあるか、何故オススメしたいのかといった読者へのメッセージを本に挟む。
それを借りて読んだ人が、今度は感想をメッセージカードに書き加えていく。こうしたメッセージカードのやり取りを通して、本やそれに対する思いと人とが繋がっていく。
現在、全国に700箇所以上に広がっており、多い場所では2万冊以上の蔵書がある。同施設は誰でも加入でき、自分の好きな場所でお気に入りの本で図書館を開くことが出来る。なかには、大学のスペースを利用して、本が1冊も無い状態から立ち上げたこともあるそうだ。
この図書館には「こうでなければいけない」という型や規則はない。各オーナーの考えに即して、それぞれ自由で個性的な図書館が開かれている。
このような「まちライブラリー」の活動を、石田さんは2003年に自宅を開放して始めた。当時は自分の本を地域にシェアする形で開いていたが、次第に友人・知人から本が集まって、個人宅では収まらないほどになったそうだ。やがて和歌山県に場所を移し、本を通じて繋がりあえる場所として規模を拡大していった。
もりのみやキューズモールでは、カフェと併設された図書館となっており、このショッピングモールを利用する人が気軽に立ち寄れる場所となっている。館内には子どもがくつろぎながら本を読めるスペースがあり、子ども連れの家族の来館も多い。
さらに休日には館内の一部をラジオブースにし、地域のラジオ局「FMこころ」の生放送が公開される。その時間帯にはラジオリスナーが多く来館し、普段ではできないようなパーソナリティーとリスナーの近距離でのコミュニケーションも行われている。
会員が好きな本やテーマを持ち寄って行うトークイベントも頻繁に開催されており、それらのイベントも人々の新たな出会いの場になっている。
まちライブラリーの持つ個性的で自由なスタイルは、図書館に単に本を読むということ以上の価値や目的を与えてくれる。
それはより多くの人々を図書館に寄せ付ける魅力となっていくだろう。こうした場所が増えていくことで、希薄になっていた人と人とのコミュニケーションが、本を通して、図書館を通して、より活発になっていくと感じた。
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