東北は岩手県陸前高田市広田町に東京から移住してきた三井俊介さんは、一体どのような日々を送っているのだろうか。連載3回目は、三井さんの日々の働き方に迫った。海と山、畑に囲まれた土地では、季節や天候によってスケジュールが異なる。(オルタナS副編集長=池田真隆)

被害状況を県外から来た若者たちに説明する三井さん(写真左)

三井さんは、NPO法人を立ち上げて活動しているが、日々の仕事は町の復興ということもあり、さまざまだ。漁や田植えの手伝いや、県外から来た人の案内、月に一度は東京などに打ち合わせで出張もする。大きい枠組みでくくると復興支援や地域活性化といえるが、ミクロ的に見ると、それぞれ違うスキルが必要とされる。

なかでも、人を案内する現地コーディネートでは、多くの人が「変わる」瞬間を目の当たりにしてきたという。2012年からこれまでに、約600人を案内してきた。その3分の2にあたる400人ほどが大学生だ。

写真右奥が三井さん

大学生は、比較的自由な時間を持つことができる。自由であるがゆえに、進路のことなどで悩む時期でもある。そんな彼らに、復興を目指す街の雰囲気を体感させ、地元住民との交流機会も設ける。

「山と海に囲まれた広田には人を変える力がある」と話す。三井さん自身も大学を卒業後、この土地に来て、変化した。しかし、三井さんは、「(環境の影響もあるが)自分しか自分を変えることはできない」との思いで、彼らが自分自身で変わるきっかけだけを提供する。

「モノ、人、情報があふれた都会から、真逆の環境に来ることで、ゆっくりと自分自身と向き合えた。そうして豊かな生き方を学んだ」と三井さん。

スーパーやコンビ二で買っていた食材と、漁や畑で収穫した食べ物の味はまったく違う。そして、過疎が進み、数十年後にはなくなってしまうかもしれない町をみんなで活性化していく働き方も、外で会った人には全員挨拶し、おすそわけ文化を大事にする付き合い方も、ここに来るまでは知らなかった生き方だ。

日々、さまざまな業種・価値観を持った人と接していく復興地では、「未来をつくる」力が求められると話す。「これからの時代は、気付いた人同士が、自分たちで協働していく時代となる。業種の異なる人たちと、どのようにして組み合うのか、その能力が必要になってくる。ここでの学びは、確実に未来をつくる力になる」。


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東北復興支援活動を行うNPO法人SET(セット)は、課題解決型スタディープログラム「Change Maker Program(チェンジメーカープログラム)」を開催する。同プログラムでは、セットの支援先である陸前高田市広田町に7日間滞在し、町の課題解決に挑む。

日時:3月17日~23日
定員:14名
参加費:8万円
無料説明会:2月10日(場所は都内を予定。詳細情報は申し込み者に送られます)
詳しくは⇒http://set-forjapan.jimdo.com/change-maker-study-program/