大学卒業後の進路は、カンボジアに教育を届けること――子どもたちが出稼ぎに行かなくてもすむように現地で事業の立ち上げを計画している現役大学生がいる。チャリティーイベントやネットで寄付を集め、今年2月にはカンボジアに小学校を建設した。(オルタナS副編集長=池田 真隆)
この動きを起こしているのは、21歳の現役大学生内田隆太さん(21・東京都市大学環境情報学部4年)だ。カンボジアの教育支援を行う任意団体Share the Wind(シェアザウィンド)の代表を務め、同国に小学校を建設したり、国内で若者向けに啓発イベントを開催している。
今年2月には、人口600人ほどのリエンポン村に小学校を建設した。建設にかかった費用は人件費や材料費合わせて185万円だ。2013年1月から毎月チャリティーイベントを開催し、さらにクラウドファンディングも活用し、約1年がかりで集めた。
■村に雇用創出を
もともと、リエンポン村には2教室分の小学校があった。しかし、午前は1年生、午後は2年生の授業で使われ、3年生以上の子どもたちは、村から3~4キロ離れた小学校まで通学しなければいけなかった。
内田さんたちが、2教室あった小学校に、新たに2教室を追加したことで、この村は4つの教室を持てるようになった。来年度からは、4つあるうちの2つの教室を、幼稚園としても活用するという。同国では、年齢が上の子どもが下の子どもを気遣う傾向にある。なかには、お姉さんがわずか5000円ほどで見知らぬ大人に身体を売り、妹や弟を学校に通わせているケースもある。
内田さんは、「近くに弟や妹がいることで、心配なく自分たちも学校に通えるようになる」と言う。今後の展望は、「村に産業を興すこと」だ。経済的に貧しい家庭の子どもたちは、学校に通わずに、出稼ぎに出ているため、村で雇用を生み出すことを狙う。
村の資源で、衣類の染料や、オイル、石鹸などを作る予定だ。キノコの栽培をして、市場に売り出すことも考えている。
■テレビがきっかけで途上国に興味
内田さんは、団体を立ち上げた2012年からカンボジアに定期的に通っており、同国の教育委員会と連携を取りながら、これまでの活動を行ってきた。リエンポン村を支援先に選んだのも、教育委員会からの推薦だ。
同国では、教育に割く予算が少ないため、「教師の派遣はできるが、施設の建設費用までは用意できない」との返事をもらっていた。教育に予算を割けない現状は、首都プノンペンなどのように人口が集中した地域ならまだしも、地方ではなおさらだった。
内田さんが途上国に興味を持ったのは、中学生のときに観たテレビ番組がきっかけだ。その番組では、スラム街のゴミ山で暮らしている子どもたちが映し出されていた。子ども好きだった内田さんは、その光景に衝撃を受け、20歳の誕生日に初めてカンボジアを一人で訪れた。
1週間の滞在で、物乞いや売春行為をする少年少女を見て、「何かできないか」と強く意識するようになった。この思いが活動の原点だ。
来年3月には内田さんは大学を卒業する。国内で就職はせずに、カンボジアに移り、住み込みながら事業の立ち上げに奔走する予定だ。同世代が就職していくなかで、オルタナティブな進路を選ぶことについては、「やりたいことをやっているだけ」と話す。「素直に、自分が好きなことをしているのであって、支援しているとは感じていない」。
「子どもの笑顔が好き。一人でも多くの子どもたちに、ワクワクドキドキする未来を考える機会を与えたい」と先を見据える。