ソーシャルメディアを使った採用支援事業を行うソーシャルリクルーティング(東京・渋谷)は6月11日、金額は非公開だが数億円規模の資金調達に成功した。メディア事業や海外進出を加速していくという。同社の春日博文社長(26)に今後の展望を聞いた。(聞き手・オルタナS副編集長=池田 真隆)

ソーシャルリクルーティングは、2011年、春日社長が大学卒業を機に起業した

――2013年、ソーシャルメディアを使った就職活動生の数が全体の3分の1にあたる20万人に達しました。「フェイスブックはプライベート情報が筒抜けになってしまうので、就職活動には向かない」との声もありましたが、利用者数は増え続けています。

春日:就職活動にSNS(フェイスブック、ツイッター)を使う人は年々増えています。創業した2011年が5万人、2012年が15万人、そして2013年が20万人でした。

毎年増えている要因は、先輩からの口コミが大きいととらえています。創業してから3年間、プロモーション費用などはほぼかけていません。

――20万人が就職活動にSNSを利用していますが、このうち成功事例はどれくらいでしょうか。

春日:この20万人のなかには、大手就活サイトにも登録している人もいるので一概には言えません。ですが、去年、われわれのサービスで、企業説明会などに集客でき、実際に行動を起こさせた総数は、1万5000人から2万人ほどです。

――春日さんは就職活動の成功をどうとらえていますか。

春日:自分の頭で考えて、行きたい企業を見つけ、そこに行けた場合だと思います。

社会的な評価やブランドだけで企業を判断させてしまうような社会にはしたくないです。自分たちで調べて、行きたい企業を見つけやすくする環境にしていきたいです。

――創業3年で営業実績は400社を超えています。その内訳は、ソーシャルメディアを採用に生かすコンサル事業が200社、企業説明会などへの集客支援が200社です。これを実現できた営業体制について教えてください。

春日:営業人材は、私を含めて8人です。全社員の3分の1ほどの規模です。多くの会社に導入していただけた要因は、最初に業界のリーディングカンパニーを攻めたことにあります。

営業戦略として、業界トップからあたりました。トップに導入していただき、その実績をもって、他社さんに営業しました。

――業界内で前例がないなか、業界トップの企業を口説くのは難しいのではないでしょうか。

春日:まだわれわれの会社を知らない企業がほとんどです。なので、取引する理由をつくるために、手広く事業を展開するよりも、集中して一つのサービスを強化することを意識しました。

フェイスブックページは誰でも無料で作成することができます。しかし、われわれは、創業初年度から1万5000人ほどの就職活動生にリーチできたので、数を集めることができました。それが強さでした。

それに創業した2011年に、ソーシャルメディアを就職活動に生かすサービスはなかったので、希少価値が高かったのだと思います。

――6月11日には数億円規模の資金調達をしました。メディア事業を強化するとのことですが、構想を教えてください。

春日:これまで就職活動生の会員データを有効利用できていない課題がありました。新卒で就職する回数は、人生で一回だけです。そして、就職するとサービスから離れていきます。

そこで、就職活動が終わっても、ユーザーに日常的に使ってもらえるように、2月からメディアの運営を始めました。コンテンツは、面接のハウツーや営業・ライティングのコツ、資格、留学関係の情報です。

今後は、転職支援サービスも行うので、このメディアのIDで、就職も転職もできる仕組みにしていきます。

このメディアを運営するのは、新卒社員と私の2人ですが、一日100本の記事を配信しています。今回調達した資金は主に、記事コンテンツに使います。一日300本の記事配信を目指し、キャリア・就職分野で著名な執筆家にも依頼しようと考えています。

――春日さんは2011年3月に大学を卒業し、同年4月に友人と2人で会社を立ち上げました。今年で4年目ですが、事業も拡大していき、社員数も30人弱に増えました。仕事のモチベーションを維持するにはどのようなことを意識していますか。

春日:正直、モチベーションの上下を感じたことがありません。目指す社会の実現に向けて、日々たんたんと動いているだけなのです。よく「人間ではない」などと周りから言われますが(笑)。

人材の流動が容易にできる社会にすることが目標です。この目標はぶらさないので、モチベーションには依存しません。

創業してから、毎日色々なことがありました。創業メンバーが抜けたり、中途採用で私よりも年齢の高い社員が加わり、平均年齢も27歳になりました。このように環境は常に変化しています。

ですが、立ち止まって、自分の生き方を再考しようとは思ったことがありません。まずは、行ってみてから考えるタイプなので。

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