今夏2周年を迎えた EDAYAは、「マイノリティーのエンパワーメント」を新テーマに設定し、新作ジュエリー「PULCHUS(プルチュス)」を発表した。2万円台から10万円台まであり、それまでの素朴なイメージを一新し、高級感を前面に押し出した。(PULCHUS は北ルソン・カリンガで、「私はここにいる、私らしくいる」という存在証明を示す言葉。)(オルタナ編集委員=高馬 卓史)

EDAYAの新作ジュエリー・シリーズ

EDAYAの新作ジュエリー・シリーズ

EDAYA2 EDAYA3

新ジュエリー・シリーズのデザインの大半はEDAYAの共同発起人であるエドガー・バナサンさんが担当。エドガーさんは、北ルソン・山岳先住民族カリンガ族の工芸家だ。現地の農村に住む人々の精緻な職人技とコラボレーションしている。

9月13日、この新作ジュエリー・シリーズの発表会にあわせて2周年記念イベントが開催された。新作発表の後に、ガーナの零細米作農家支援で新事業を立ち上げた田代絢子さんと、エドガー・バナサンさん、EDAYA代表の山下彩香さんのトークショー「途上国と共にある新しい社会起業のあり方」が行われた。

以下、トークショーの要旨をまとめた。

トークショーの様子((左から、田代さん、エドガーさん、山下さん)

トークショーの様子(左から、田代さん、エドガーさん、山下さん)

田代:ガーナも経済成長は著しいが、現地に行けば、貧富の格差も著しい。その貧富の格差には、心から憤りを感じました。都市部では、ジャスミン・ライスが良いと、わざわざタイやベトナムの輸入品の高価な米を食べる。

かたや農村部では、米を作っているのに売れないという現状があります。なぜかといえば、都市部に行けば「ガーナ産は、絶対に買わない。そもそも、ガーナ人が作る米は美味しくない」という決めつけがあるからです。なんで、市場機会が国内にあるのに、ガーナの農民はそれを逃しているのだろうと憤りを感じました。

その不均衡をただすために、零細米作農家の人々と連携することになりました。ジャスミン・ライスの種子を買ってもらい、農業指導もしました。品質というものを考えた人がいなかったので、そこから指導しなければならなかったのですが、農業指導した米を買い取ってブランディングして、販売しました。

山下:田代さんと話をしていて、ガーナの農家もフィリピンの工芸家も、立場が一緒だなと思いました。ほとんど評価されない仕事なのです。非常に価値のある仕事をしていても、誰も認めてくれない。その価値をいかに作りだすかということが、共通点であり、意味もあると話しあいました。

実際、工芸家・音楽家で、このジュエリーのデザインを担当してくれたエドガーさんも鉱山で働かざるを得なかった。日々の暮らしに疲弊してしまうわけです。だから、なかなか評価されない現実があります。

田代:やはり、ガーナの農村部の人々が、すごく卑屈になっている理由というのは、評価されるチャンスに恵まれなかったからです。自分のポテンシャルを知ることができず、夢を描くこともできない。お金持ちが偉いと思っているので、貧しい自分たちはかっこ悪いと思っているから、自分の農業に誇りを持てないという同様の現実がありました。

山下:あえて、高級ブランドにしたかといえば、従来のような、すぐに真似のできるような工芸品を製作するのではなく、真似のできない高いクオリティのジュエリーだからこそ、製作者もプライドを持てるし、さらなるクオリティーもあがり、持続可能性も生まれると確信したからです。

ジュエリーであれば、海外に輸出しやすいので、国外での評価を受けやすい。フィリピンの場合は、コピー商品も出やすいので、海外に輸出して、ブランドを確立した上で逆輸入することで、この事業は成立すると考えています。

キーワードは、「どんな職業であれ、自尊心、プライドを満足させるような働くチャンスがあれば、人間はなんだってできるのではないか」ということです。

途上国の支援は、やはり、「どれくらいの人々の生活が変わりましたか」という人数の規模で語られることが多いのです。でも、一概に人数だけでは測れない。一人の人間が変わることのインパクトもあると思っています。

まずは、(このコレクションのデザインをした)少数民族カリンガ族出身のエドガーさんの作品とそれを支える製作者の人々をひとつのロールモデルにしたいのです。この成功例で、みんなができるはずという希望を持ってもらえる可能性を試みています。EDAYAの根本を変える試みですが、やはり、持続可能な試みとして成功しなければ意味がありませんから。

エドガー:クオリティとして、自分が良いと思っていたものが、海外でどう評価されるのか、今までは分からなかった。ただ、こうして海外に輸出することで、そのクオリティを再認識することができると考えています。

田代:ガーナでも、当初、たった一人、私たちと農業をやってくれたエリックさんという人がいました。厳しい指導だったかもしれないけれど奮闘してくれた。

その結果、4カ月後に、非常に豊かな田んぼが生まれました。その結果を見て、周囲の農民が目覚めてくれた。たった一人の勇気と行動が、周囲の人々を変えるロールモデルになった経験があります。

山下:そういう話には感動しますね。一人の人の勇気と行動が、周囲の希望の灯として、次々に灯っていく。だから、やり続けなければならない。

今回の新作でわかりましたが、エドガーさんのような才能を持つ人々が農村には、まだまだいます。今回の試みは、「ありのままでいいけれど、マイノリティーの発信として、みんな、やればできる」というメッセージを込めています。(要約以上)

この後、実際の新ジュエリーが回覧され、クオリティの高さに驚いたが、やはり、代表の山下さんが話していたように、あえて高級ブランドに挑戦することが、エドガーさんのような工芸家や地元で製作する人々のプライドとなり、それがさらなる品質の高さを生み出し、持続可能なビジネス・モデルになるのだということが実感できた。この試みの成功が、新たな途上国支援のモデルケースになれば、次々と後続が生まれそうだ。


[showwhatsnew]

エコ・ファースト環境メッセージEXPO2014
スクリーンショット(2014-09-24 21.20.42)