防災情報マガジンを通じて地域の住民・企業・行政をつなぎ、有事に備えた街のコミュニティを形成することを目指す大学生がいる。法政大学経済学部4年の緒方康治さんだ。
緒方さんが街のコミュニティへの問題を感じたのは、去年の東日本大震災での復興支援活動がきっかけ。震災発生後、緒方さんは大学を休学し、10ヶ月間の支援活動を行ってきた。
「東北の復興支援活動でわかったことは、街のまとまりの重要性。街全体で震災に備えていた地域と、そうでない地域とでは被害に差が見られた」と話す。
311の震災では、「釜石の奇跡」と呼ばれる出来事が起きた。岩手県釜石市にある釜石東中学校学区は、7割近い建物、市の被災全体の4割に上る約1800戸が被災したが、小中学校では11日欠席だった生徒を除いて一人の犠牲者も出さなかったという。生徒自ら率先して同学区の小学生の手を取り、共に高台に逃げたことが要因である。
緒方さんはこの出来事を通して、普段からの防災ネットワークの重要性を意識しだした。東京では、首都圏直下型地震が起きるといわれている。最大震度7、死者9700人の被害で出ると東京都は発表している。
特に東京都で産業が密集する地区では防災意識の低下が問題とされている。東京港区では、街のコミュニティである町会・自治会が開催する防災訓練への参加率は全体の3%。街を構成する行政・企業・住民の連携もほとんどない状況だという。
緒方さんは東京で生まれ、東京で育った。「生まれ育った大好きな街、大切な人たちを守りたい。そして、この問題意識に気づいておきながら何も行動しなければ、きっと後悔する」と、今回のプロジェクトを企画した背景を話す。(オルタナS副編集長=池田真隆)
緒方さんが取り組むプロジェクト