シェアリングエコノミー――ソーシャルメディアの発達で可能となったモノ・お金・サービスなどの交換・共有で成り立つ経済のことだ。シェアする行為を文化にし、資本主義に代わる経済圏にしようという取り組みが始まった。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

交流会では、役シェア系サービスの事業者が約50人集まった

10月30日に都内で開かれた交流会では、シェア系サービスの事業者が約50人集まった

ソーシャルメディアの構築・運用代行を行うガイアックスは10月30日、ウェブメディア「Share! Share! Share!」をオープンした。同メディアでは、家や車などをシェアするライフスタイルを送る実践者のインタビューやコラムなどを掲載していく。

個人間のシェアを軸にしたサービスの勢いは、ソーシャルメディアの発達により、増している。その筆頭が、空き部屋を宿泊施設として貸し出す、Airbnb(エアービーアンドビー)だ。現在の登録物件数は190カ国で150万件以上。宿泊客数は2500万人を超える。

そのほかにも、スマートフォンで手軽に貸しきり自動車を予約できるものや、個人間でのカーシェアリング、駐車場の貸し借りなど、さまざまなシェアに特化したサービスが生まれている。

ナイキやグーグルなどをクライアントに持つAKQAクリエイティブディレクターのレイ・イナモト氏は、「コミュニティがビジネスを食う時代に入った」(2014年2月)とオルタナS編集部の取材で断言している。

個人間でシェアすることは、既存の事業者のサービスを利用することよりも格安で、さらにつながりを生むため、若年層を中心に受け入れられている。今後のサービスの存在価値は、「コミュニティと融合できるかに掛かっている」(レイ・イナモト氏)。

■「体験」「つながり」「自由」――シェアの魅力

ガイアックスは10月30日、都内でシェアサービスの事業者などを対象にした交流会を開いた。集まったのは、約30の企業から50人。所有するのではなく、あえてシェアする魅力は何か。それぞれの事業者から話を聞いた。

「社会とのつながりを実感できること」。こう話したのは、ワンコインで子育て支援者に助けを求めることができるAsMama(アズママ、神奈川県横浜市)の甲田恵子代表。「シェアは利用者が頼り合える仕組み。頼ってもらったほうは、頼られることで生きがいにもなる」。

所有しないことが、現代の若者の価値観に合っていると見るのは、ナナフク(東京・港)の福神耕平代表。同社では、個人間で本の貸し借りを行う。福神代表は、「物欲がない人には、シェアは合っている」とし、さらに物理的な問題にも言及。「一人暮らしをしたばかりの若者の家には、物を置けるスペースに限りがある。でも、シェアして一時的に置くことには抵抗がない」。

訪日外国人旅行者向けのガイドマッチングサービスを運営するHuber.(神奈川県鎌倉市)の紀陸武史代表は、シェアエコビジネスが躍進するのには3つの理由があると言う。

1つ目は「有休資産を貸出すことで生まれる新たな利益が、もてなす余裕を生むこと」、2つ目は「ホストとゲストがお互いに評価し合うことで、もてなす意味が生まれること」、そして3つ目が「嫌なお客さんは断ってもいいという、もてなす自由があること」という点だ。

「好ましい相手だけとコミュニケーションを取れるので、ホストとゲストの間にストレスが生まれにくく、結果としてシェアエコビジネスは居心地の良いコミュニティをつくれる」(紀陸代表)

■「資本主義に代わる文化に」

シェアのムーブメントを起こしていきたいと話す佐別当さん

シェアのムーブメントを起こしていきたいと話す佐別当さん

シェアリングエコノミーに向けて、国も規制を緩和していく考えだ。安倍晋三首相は10月15日、規制改革会議(議長・岡素之住友商事相談役)で「民泊サービスの規制を改革する」と発言した。

本来、個人宅を宿泊施設とする場合は、旅行業法の許可が必要だが、外国人観光客を受け入れるために、この規制を緩める方針だ。

ガイアックスでは今後、ウェブメディアとリアルイベントを通して、シェアの文化を醸成していく。Share! Share! Share!事務局の佐別当隆志さんは、「シェアを広げる上で主役になるのは、プラットホームを運営する事業者だけでなく、シェアを楽しむ個人。シェアを一過性のブームに留めるのではなく、資本主義に代わる文化にしていきたい」と意気込む。

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