ソニーは1978年、特例子会社ソニー・太陽(大分県日出町)を設立した。同社の約7割は障がい者であるが、制作している業務用マイクロホンは長年、TV業界や音楽業界で親しまれている。ものづくりに込めたソニーのDNAをどのように障がい者に伝えているのか。(MAGADIPITA支局=久保田 惟・慶應義塾大学総合政策学部1年)

取材したソニー・太陽の前代表の長田博行氏と人事センターダイバーシティ開発部の森慎吾氏

取材したソニー・太陽の前代表の長田博行氏とソニー人事センターダイバーシティ開発部の森慎吾氏

■井深大が贈った言葉

1978年に障害のある人が障がいの有無 に関わらず働く環境を作るというソニーの 創業者井深の意志の元、ソニー株式会社の 特例子会社として設立されたソニー・太陽 株式会社。特例子会社とは、障がい者を雇用するうえで特別な配慮をしており、厚生労働相から認可を得ている会社のこと。すべての民間事業者には法定雇用率以上の割合で障がい者を雇用する義務があり、民間企業は従業員の2.0%だ。特例子会社は、障害者雇用率の算定において親会社の一事業所と見なされる。

障がい者雇用の現場に求められることとして、ソニー株式会社の人事センターダイバーシティ開発部に所属する森慎吾氏は、障がい者雇用のハード(施設・設備環境など)とソフト(制度・仕組みなど)を整える必要もあるが、障がい者と共につくっていくという当たり前の思いがソニー・太陽にはあると話す。

支援や福祉の視点からの取り組みではなく、そこで働いている人と向き合い、ハードとソフトの両立に加えて、心の面も強固に持つことが大切だという。

ソニー・太陽は全社員の約70パーセントが障害者だ。正直、その工場で作られる製品の性能に疑問を持つ人もいるだろう。しかし、制作されている業務用マイクロホンは音楽・TV業界に愛され、世界に誇るソニー製品として販売されている。

ソニー製品をつくるという責任と品質の維持は、特例子会社でも変わらない。創業者井深大は、「障がい者だからという特権なしの厳しさで健丈者より優れたものを、という信念をもって」という言葉を贈った。

職人としての高い技術力を持つことはそう簡単なことではないが、工場全体で社員と向き合い、一人一人の障壁を取り払う。当たり前のように聞こえるが、「いまの障害者雇用全般において重要視される感覚だ」と、現場を長年指揮してきた長田前社長は言い切る。

前代表取締役社長の長田氏の講演の様子

前代表取締役社長の長田氏の講演の様子

■「障害者と向き合う」ではなく「その人と向き合う」

身体・知的・精神障がい者は全国に約788万人いる(2013年障害者白書参照)。この数字は人口の約6%にあたる。

今までは、障がい者は「かわいそう」だから支援しなければいけないといった見方があった。こういった気持ちはもちろん大切だが、働く上でこれから必要になるのは、障がい者自身も情報発信を行う現場である。

どちらかが支援を「される」という関係ではない。お互いにその人の能力が発揮される環境を考えることが必要になる。そのためには、障がい者も自分自身のことを知ってもらわなければならない。

その発信を受ける側は、障がい者というカテゴリで考えるのではなく「その人」のことを想い、行動すること。これは、人として当たり前で大切であると森氏は話す。

講演中、長田氏は「障がい者の中にも良い人もいれば悪い人もいる」と話した。その言葉を受け、「障がい者だから」という先入観を持って接していることに気づいた。

障がいを持っていても個々人と向き合うことを忘れてはならない。障がい者という言葉が個人と向き合うきっかけになるような言葉にしなければならないのではないだろうか?カテゴリで個人を判断してしまいがちな今だからこそ考えなければならない課題だろう。

講演後の取材に答える森氏

講演後の取材に答える森氏

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