タイトル:電園復耕~大通りからそれて楽しく我が道を歩こう
なぜ人を押しのけて狭き門に殺到するのか?自分を愛し迎えてくれる人たちとの人生になぜ背いて生きるのか?
この書き下ろしは、リクルートスーツの諸君に自分の人生を自分で歩み出してもらうために書いた若者のためのお伽話である。(作・吉田愛一郎)
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◆いざ耕作放棄地へ
プレートはもう一つあった。「これは?」ウェイターが尋ねると末広は「俺たちで食べる」と言った。「いただきます」啓介がフォークを卵の上に持ってゆくと、バースデーが末広の膝に顔を乗せて上目遣いで末広を見ていた。
末広はベーコンを摘まみあげて、バースデーに食べさせた。「俺は肉喰わね―んだ」と言って、もう一つのベーコンも犬にやった。
啓介はフライドエッグの白い端にナイフを入れてサラダの上に乗せ、口に入れた。レタスがシャキッと音をたてて卵の白身が舌の上をつるっと滑った。末広はトーストの上に卵を乗せて、大きな口を開けて天井を見ながらその半分をかじった。卵の黄身が垂れて末広のダウンジャケットに黄色い筋をつけた。末広はジャケットを脱いで、バースデーの鼻先に黄色くなったところを示して「拭け」と言った。バースは一生懸命に舐めた。舐めていたジャケットのポケットに入れてあった携帯電話が短く鳴って、ショートメールが届いたことを伝える。末広がポケットから携帯を取り出して眉間に皺を寄せて言った。
「輿水敏夫さんが来る」
「そのプレートの奴もお前が喰っていいよ」
「敏ちゃんが食べるかもしれないから」
そんな会話をしていたら、表に軽トラックが到着した。
バタンとドアが閉まる音がして「どうもどうも」と日に焼けた敏夫が満面の笑みで入ってきた。
「朝飯どうですか」末広が進めると
「食べてきました。でもコーヒーは貰います」
「では啓介食べてしまえ」と末広が言ったので、啓介はベーコン一枚をバースデーにやってからトーストを手にした。パンはアメリカより日本の方が旨いと思った。
啓介はリズの分のフライドエッグをトーストの上に載せてからベーコンとレタスをその上に敷いてもう一枚のトーストをその上に重ねた。それをナイフで四つに切ってサンドイッチの様にし、手掴みで、黄身が垂れるから皿の上に身を乗り出して食べることにした。口の中で卵の黄身が広がり、パンの甘さとベーコンの少ししょっぱい油が混ざった。とても旨かった。するとリズが何も食べていない事に気が付いた。
食べ物どころではない眠さだったのだ。そのことを末広に言おうとしたが、その前に末広がウェートレスに「もう一つサンドイッチにしてくれねーか」と頼んでいた。「サンドに一度はサンドイッチだよな」と末広が大笑いしたが、他の二人は少し笑っただけだった。サンドイッチが出来るまで見に行く土地の話などしてから、アルミホイルに包まれたサンドイッチを啓介が受け取ると三人は立ち上がった。
文・吉田愛一郎:私は69歳の現役の学生です。この小説は私が人生をやり直すとすればこうしただろうと言う生き方を書いたものです。半世紀若い読者の皆様がこんな生き方に興味を持たれるのであれば、オルタナSの編集スタッフにご連絡ください 皆様のご相談相手になれれば幸せです。
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