原宿のオーガニックカフェから、お客さんたちの笑い声が聞こえる。笑ったと思ったら次の瞬間には歓声をあげている。彼らが見ているのは、男女5人組のパフォーマー「実験道場」だ。会場を巻き込んだダンスに芝居、体を張ったコントにと、わずか90分の間に観客をとことん楽しませるパフォーマンスが繰り広げられる。鍛えられあげた身体を持つ美男美女は全員、引きこもりやパニック障害などで苦しんだ過去を持っている。(小嶺 晶子)
 

実験道場のメンバー、右から2番目が唯一の女性メンバーのJunkoさん

2015年9月の旗揚げ以来、毎月欠かすことなく、毎回違う場所、違う内容でパフォーマンスを行ってきた。実施された場所はリッツカールトンホテルや味の素スタジアム、三宅島やカンボジアの小学校など幅広い。回を重ねるごとにリピーターやファンは増えていった。彼らがパフォーマンスを通じて伝えたいメッセージは、「人生は実験だ。失敗を恐れるな」。

舞台上でない時も、目の前にいる人を楽しませる心意気の持ち主たち。だがメンバー全員、引きこもりやパニック障害などで苦しんだ過去を持つ。

実験道場の中心人物、紅一点のJunkoさん(Junko博士)。静岡県浜松市出身。大学時代からダンスを始め、すぐに頭角を現す。数々のダンスコンテストで優勝し、「美人賞金ハンター」と呼ばれメディアにも出演した。矢沢永吉や柴咲コウ、9nineら著名アーティストのバックダンスや振付、演出も手掛ける実力派だ。

ダンスに明け暮れる日々を送っていた時、大切な父親が癌で亡くなる。悲しみの中で、「人生は短い。やりたいことをやろう」と思ったという。その後、Junkoさんが培ったダンス技術は、アフリカの子どもたちと運動会をしてダンスを教えるなど、ソーシャルな活動に生かすようになっていく。

2015年にブレイクダンサーの蛇澤多計彦さんに出会ったJunkoさんは、志を同じくする仲間と共に、実験道場を立ち上げる。そこからは休む間もなく、毎月舞台を作り上げてきた。

「人生は実験だ」のメッセージを、メンバー自身も体現している。Junkoさんはニューヨークのアポロシアター、アマチュアナイトに挑戦。オーディションで選ばれた人のみがアポロシアターに出演できる。

日本人では過去に、平井堅や坂本龍一が出演している。見事合格し、アポロシアターのステージ立ったJunkoさん。

城ノ脇隆太(RYUTA博士)さんもまた、ギネス記録に挑戦した。その結果、ブレイクダンスの技ジャックハンマーの世界記録保持者に。数々の「実験」と称した「挑戦」の中で、メンバー一人ひとりが着実にスキルを磨いていっている。癌センターやホスピスには自ら出向き、無償でパフォーマンスを披露している。

一見順風満帆に見える彼らだが、それぞれの懐事情は深刻だった。実験を続けるためには、先立つものが必要だ。そこで行う最初の実験は、クラウドファンディング。

インターネットを通じて共感者から支援金を募るクラウドファンディングは、どれだけファンがいるか、応援されているかの指標にもなる。

実験道場はMotionGallery(モーションギャラリー)でクラウドファンディングを開始後、1日で目標金額100万円の4分の1が集まった。支援は3月末日まで受付けており、初のニューヨーク公演を目指している。支援の御礼として、Junkoさんに振付けを直接指導してもらえる特典も。

どん底から這い上がり、世界を目指す彼らの実験に参加してみるのも、面白い実験かもしれない。

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