今年2月、空き家など地域の資源を生かして産業をつくることを目指したLittle Japan(リトルジャパン、東京・台東)という会社が立ち上がった。代表を務めるのは、農林水産省を退職した柚木理雄さん。安定の道を捨て、第二の人生として、地域の廃棄物を資源へと変えていく道を選んだ柚木さんに話を聞いた。(寄稿・守屋 真一)
■地域の資源とはなんだろう?
資源と廃棄物の違いはなんでしょうか? 私はそれを必要とする人がいるか、ではないかと思っています。
父の実家が、柚木鉄工所というところで、土地と建物、鉄の機械やトラックが残っています
それは、当時はすごく価値があった資産だったのかもしれないけど今は処分するのに費用がかかる負債になってしまっています。
使う人 、必要とする人がいればそれは資産なんだけれども必要とされなければ、それは負債になってしまう、そんな風に思うようになりました。
■1割は空き家
人口が減っていく中で、ますます増え続ける家。そして住む人がいなくなった家が、空き家です。
今、地方だけでなく東京でも、住む以上の家があり、空き家の数は年々増え続け、820万戸、実に13.5%が空き家となり(平成25年住宅・土地統計調査 総務省統計局)社会問題となっています。
また、2033年には、2170万戸、30.4%にまで増加するとの推計もされています(野村総研)。
一方で、今、日本を訪れる外国人の旅行者は増え続けており、2013年に1000万人を超えたばかりだったのが、2016年には2000万人を超え、宿泊施設の不足が問題となっています。
家ではなく、宿泊施設として利用すれば、空き家は資源に生まれ変わります。
■地域と世界をつなぐゲストハウス「Little Japan」
まず、最初の取組みとして実施するのが地域と世界をつなぐゲストハウス「Little Japan」です。
Little Japanをオープンする浅草橋は、羽田空港・成田空港のどちらからも京急・都営浅草線で一本。外国の方に人気の浅草や秋葉原も徒歩圏内という好立地な場所です。
2階から4階が宿泊施設で、1階には、周辺にお住まい・お勤めの方にお立ち寄りいただけるように、カフェ・バーとして運営をします。
カフェでは、ラオスのフェアトレードコーヒーを扱う「ドリプロ」さんが、焙煎したてのコーヒーを提供し、宿泊者とのちょっとした国際交流、外国語での会話を楽しまれたい方はスタッフがおつなぎいたします。
■デザイン事務所がゲストハウスに
さらにこのエリアを中心にマチに開いたシェアスペースとして活動してきた「マチナカ製図室」から分室化したデザイン事務所がLittle Japanの中に入ることになりました。
デザイン事務所がゲストハウスに入ることで、時に旅行者も交えながら、地域の方とマチづくりについて、浅草橋エリアの今後について語ることができる場になればと思っています。
■初めは小さなゲストハウスから。そして、地域と世界をつなぐ場所に
「外国の方に日本の良さをわかってもらいたい!」そんな風に思っていても、相手は全然文化の違う国の方、日本人が良いと思っているものを相手も良いと思っているかはわからず、もしかしたら良さの押し売りになってしまっているかもしれません。
まずは、外国の方でも、特に日本のことが大好きな外国の方が、日本のどんなところに魅力を感じて来てくれているのか、それを先入観なく、聞いてみたいと思っています。
そして、ゆくゆくは、この外国の方が必要とするものと、地域の資源を結びつけることで、地域に産業を創るお手伝いができれば、と思っています。
■「公務員をやっていたら安定しているのに」
たくさんの方から、こう言っていただきました。
今回の起業に至ったのは、今の日本では、成長戦略が作られても、それが実現できない現実がある、そして、この問題を解決するために、他の誰かではなく、自分でリスクを取って現場でチャレンジしたいという気持ちが、それを止める気持ちを上回ったからだと思います。
そんな中で、公務員経験しかない自分にできることはなにかを振り返り、そして、これまでの自分の海外経験と地域活動、特に空き家再生の経験から、このサービス内容に至りました。
■クラウドファンディングへの掲載
Little Japanをクラウドファンディングの「Readyfor」に掲載してもらいました。
募集締め切りは4月3日で、寄付した人には、Little Japanをイベント利用したり貸切したりできる権利、オリジナルグッズ、飲食や宿泊に使えるクーポン、VIPカード(飲食や宿泊で割引が受けられるカード)などのリターンを得ることができます。
・Readyforに掲載中のプロジェクトはこちら
・Little Japanのホームページはこちら
柚木理雄:
1984年生まれ。兵庫県神戸市出身。
京都大学(学士)、京都大学大学院(修士)。
ブラジルに3年、フランスに1年住み、海外を40カ国以上を訪問。
たくさんの国を訪れる中で、日本のために働きたいと考えるようになり、2008年農林水産省に入省。国際交渉、経理、金融、農地、官民ファンド、バイオマス等に携わる。一方で、東日本大震災をきっかけに草の根活動の重要性を認識。2012年NPO法人芸術家の村を立上げ。空き家問題の解決や、様々なNPOの支援に取組む。2017年1月末に農林水産省を退職し、2017年2月株式会社「Little Japan」を創業。最初の取組として、これまでの海外経験と地域活動の経験を生かし、地域と世界をつなぐゲストハウス「Little Japan」を 2017 年 4 月、浅草橋にオープン予定。