世界に先駆け地方自治体の少子高齢化、人口減少が深刻化する日本社会。地域の過疎化が広がり財政難を叫ぶ自治体も増えるなど、既存の地域活性における「公助の仕組み」が限界を迎えている。そのような中、佐賀県多久市はシェアサービスを通じた就業機会の創出を目的とした「佐賀県多久市ローカルシェアリングセンター」を2016年11月、開設した。シェアリングエコノミーを通じて「地域ではたらく」を創出するー。ローカルシェアリングセンターの例から、サステイナブルな地域社会の実現を紐解いていく。(シェアリングエコノミー研究家=石山 アンジュ)

佐賀県多久市はシェアリングエコノミーで雇用創出を目指す

■「ローカルシェアリングセンター」とは

ローカルシェアリングセンターは、シェアリングエコノミーサービスを活用した働き方を、地域の方へ、案内から研修・サポートを行うことを目的に作られたコワーキングスペース、託児所、セミナー研修室が併設された複合施設だ。常に2名のサポートスタッフが常駐する。

佐賀県多久市は、かつて炭鉱の町として栄えたが1970年代に閉山して以来急速に人口流出が進み、現在では人口は2万人を切った。保育園などの施設が豊富にあるなど福祉的な豊かさがある一方で、就業機会がないことが、直接的な人口流出の課題となっている。

今年度開催された「クラウドワーカー育成プログラム」では、インターネットを通して個人が企業などから仕事の発注を受けるクラウドワーカーの育成を行い、子育て中の主婦や70代のシニア層など合計40名が研修生として参加。研修を修了した後は、「クラウドワークス」を通して仕事を受けながら働くことが可能となる。

クラウドワーカー育成プログラムの様子

また、この春から様々なシェアサービスを通じ働く選択肢の提供を広げていく計画だ。地元の人が地域の魅力をホストとなり案内する地域型観光に特化したシェアサービス「TABICA」を通じたプログラムも開始した。

「地域にいながら働きたいけど、会社に勤めるという選択肢しか知らない人が多い。シェアサービスを通して柔軟に仕事ができる選択肢を、もっと多くの人に知ってほしい。」

プログラムに参加した松尾梨香さん(31歳)は山形の大学を卒業後、地元のケーブルテレビに入社。26歳で結婚を機に退職し3人の子どもを育てる

「子育てを優先して時間を作りたいという軸はぶれないものの、空いた時間に在宅で仕事ができるといいなと思い、研修に参加しました。収入が目的というよりは、子育てをしている中でも、合間に自分のスキルが誰かの役に立てることがあるのであれば、使っていたいという気持ちです。このようなシェアサービスを通じで、地元に暮らしながら柔軟に仕事ができる機会があることを知らない方はまだまだ地域に多いです。会社に正社員として雇用される以外にも、好きな時間に好きなことを通して仕事ができる機会があることを、もっと多くの人に知ってもらいたい」

■シェアエコ普及に官民連携の強化を——

この取り組みを実現に導いたのは、佐賀県を中心に地域活性に取り組む(特非)価値創造プラットフォームの石崎さん。そしてシェアリングエコノミーという新たな概念の理解を得るのがまだまだ難しい中、本取組みに意義を感じ、行政を動かした多久市役所の石上さんだ。このような事例を全国で展開していくには課題も多い。

■シェアエコの地域普及に足かせとなる課題

・地方自治体へのシェアリングエコノミーの認知・普及が進んでいない。
・子育て支援・就業支援・観光振興・IT利活用と様々なジャンルを包括する為、役所内で担当課がないケースが多い。
・地域の人と、行政をつなぐ民間団体や、地域コーディネーターなどの仲介支援者が必要。

シェアリングエコノミーは地方を救うのかー。個人が主体者となり、ともに助け合う共助の社会を実現していくには、行政・民間の連携の強化と、地域に住む私たち一人ひとりの意識改革、アクションが必要である。

石山アンジュ:シェアガール(シェアリングエコノミー研究家)
内閣官房シェアリングエコノミー伝道師。一般社団法人シェアリングエコノミー協会事務局担当、クラウドワークス経営企画の傍ら、世界各国のシェアサービスを体験し「シェアガール」の肩書で海外・日本でメディア連載を持ちながら、シェアリングエコノミーを通じた新しいライフスタイルを提案するシェアリングエコノミー研究家。

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