大手広告代理店で20年間、ソーシャル・デザインを手掛けてきた福井崇人氏はこのほど、「100年ライフのソーシャル・デザイン」をテーマに卒業講演を行った。福井氏は、レディ・ガガやきゃりーぱみゅぱみゅらを例に挙げて、「パーパス・ブランディング」について話した。「マーケティングではキレイな服を着がち。裸になったときに勝つ」と強調した。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

数多くのソーシャルキャンぺーンを手掛けてきた福井氏 @渋谷敦志

この講演は、福井氏が27年間務めた同社を退職するにあたって、卒業講演として開かれた。

クリエイティブディレクター/アートディレクターの福井氏は2009年、ソーシャルグッドな案件を手掛けるチームを立ち上げた。違和感を抱く社会的課題に対して、アイデアで解決する「ソーシャル・デザイン」のメソッドを独自で開発し、その手法を生かしてさまざまな課題解決してきた。

「パーパス・ブランディング」変革者に共通

この講演のタイトルは、「100年ライフのソーシャル・デザイン」。『ライフシフト 100年時代の人生戦略』(リンダ・グラットン。アンドリュー・スコット著。東洋経済新報社)では、先進国の平均寿命は110~120歳まで伸びると推測している。

福井氏はこの著書の内容をもとに、これからの人生戦略について話した。その中で、ココ・シャネルやレディ・ガガ、きゃりーぱみゅぱみゅらを例に挙げた。この3人に共通しているのは、「パーパス・ブランディング」である。

「パーパス」とは「目的」「意図」「用途」と訳されることが多いが、この場合は少し異なり、「存在意義」、「原点」などを意味する。100年ライフでは、現在の進学、就職、退職という3ステージの人生は成り立たなくなるとされている。そういった流れの中で「自分がこうありたい」という「存在意義」や「原点」を明確にし、自分自身をブランディングしていく必要が出てくる。

ココ・シャネルは、男女差別が根強いなか、服の力で女性を解放した。レディ・ガガはバイセクシュアルでもあり、子どものころにいじめを受けた。それが原体験にあり、LGBTの解放を行う。きゃりーぱみゅぱみゅは、両親から厳しい教えを受けて育った。今の派手な服装は、彼女の中で閉じ込めていた思いを服で解放している。

福井氏は、「マーケティングではキレイな服をたくさん着がち」なので、「裸になったときに勝つ」と強調した。
「裸」すなわち個人の「存在意義」や「原点」である。

「裸になったときに、一人ひとり異なるソーシャル・デザインが生まれる。裸になれば、人と比べない生き方ができる。人生を解放する働き方を実践して、職を探す人ではなく、職を生み出す人になりたい」と宣言した。

『ライフシフト』ではパートナーの存在も重要視されている。ここでも「裸になった時に付き合える相手」をパートナーにするとうまくいく。講演では、福井氏が独自に開発した「パートナーと協働し、課題を解決する」新たなメソッドをについても紹介した。「小学生までの遊び」と「親の仕事」がパートナー探しにおいて、キーになるという。

自我が芽生える前の遊びは、本能的に好きな行為で、遊び場から受ける影響は大きく、「人生を左右するほど」とのこと。親の仕事は就労観を形成する大きな要素になる。これらに注目すると「自分の裸=存在意義・原点」が見えてくる。この2つがマッチした相手はパートナーになりやすいことを研究中とのことで、講演を終えた。

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