和歌山県紀南地域の情報を発信している「紀伊民報」。1911年に創刊された歴史ある新聞社だ。2019年11月から新聞紙面を電子版で見ることのできるサービスを開始した。さらに和歌山県紀南地域のニュースをネット発信するニュースサイト「AGARA」の運営も行っている。今回は、紀伊民放の情報メディア事業に関してマルチメディア事業部の上仲輝幸係長に取材を行った。(武蔵大学松本ゼミ支局=石岡 紘汰郎・武蔵大学社会学部メディア社会学科2年)
紀伊民報の上仲さんは「人と情報を繋ぎ、そして人と人を繋いで世界を作る」を信念に掲げ、これまでマルチメディア事業部で地元の地域住民がネットを介して交流することのできる会員制のSNS「みかん」、地元のグルメ、ファッションなどの情報を掲載した情報サイト「kii Life」の運営を行ってきた。
そんな上仲さんが新たに取り組んでいることの1つに、オープンデータの活用がある。オープンデータとは、自治体などが提供する人口統計、公共施設の場所等の様々な情報を誰でも自由に使える形にしているデータである。
今日、こうしたオープンデータの利活用は世界中で取り組まれている。しかし、そんな中、データの提供が市町村レベルではなかなかできていない状況にあると上仲さんは語る。特に防災に関してきちんとした情報のデータ化がなされていないことに疑問を感じている。
そこで上仲さんは、地元の串本古座高校と連携し、防災の専門家を招いて高校生たちと一緒に実際に町を歩きながら避難所を巡り防災マップの作製を行った。得られた情報を学生がデータ化してウェブ展開し、チラシにして地域の公民館などに置くことで少しでも情報を流通させようと尽力したという。
上仲さんは学生に災害時、情報を効率よく回すことでどれだけの人が助けることができるのかを教えたいと語り、学生がオープンデータを知ってそれを活用することでオープンデータの持つ意義を知らない大人達の意識も変えていきたいとしている。
情報をデータ化することで、言葉で伝承してきた伝統を後世にも残すことができる。情報のデータ化は地域の大きな課題である。今後は、県が公表しているデータを活用し市民にとって必要な情報に加工することを通し、地域の課題を共有して解決していくことの手助けが、新聞社の新たな役割であると上仲さんは考えている。
取材させていただいて、地域の新聞社が高校生と共に活動をしていくということに驚いた。行政や企業が単に情報を提供するのではなく、市民が情報を活用していくという新たな活動を、高校生のような若い世代が始めていくことが、これから当たり前の世の中になっていくのかもしれないと思った。
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