社会問題を事業で解決するソーシャルビジネスに興味を持つ若者は増えています。ですが、ソーシャルビジネスには一般的なビジネスモデルと異なる点がいくつかあり、事業を軌道に乗せることは一筋縄ではいきません。なぜ社会起業家は苦闘するのでしょうか。17のソーシャルビジネスを展開するボーダレス・ジャパン(東京・新宿)の田口一成社長に解説してもらいました。
◆事業を考える前にすべきこと
(下記の文章は、田口社長のブログを転載しました。原文はこちら)
最近、いろんな人から聞かれることがある。「失敗したことはありますか?」
ユニクロの柳井社長でも一勝九敗といっているのに、なぜそんなに次から次に事業を立上げられるのか?と。
そりゃ、もちろん失敗はします。でも、決して一勝九敗ではない。むしろ、九勝一敗くらいじゃないと社長失格と思っている。
貧しい人や助けが必要な人の生活を背負って始めるソーシャルビジネスに失敗は許されない。“僕たち一勝九敗なんだけど、一か八か僕らにかけてみませんか?”なんか言ったらぶっ飛ばされちゃう(笑)
じゃ、なんでユニクロが一勝九敗なのに、ボーダレスは九勝一敗なのか?みんなそこを聞きたがる。
僕の答えは、シンプルた。
「みんなビジネスモデルから考えるから失敗する」
事業を立ち上げたことのある起業家なら分かると思うけど、「事業が成功するか失敗するか」は正確に言うと、「途中で辞めるかどうか」にかかっている。
事業は続ける限り、成功までの途上であって失敗ではない。これは言葉遊びじゃなくて、本当にそうで、事業の成功というのは修正につぐ修正の連続で勝ちとるもの。
それなのに、ちょっと上手くいかないとすぐに辞めちゃう人があまりにも多い。それは情熱が冷めちゃうから。何のためにその事業をやっているか?という目的がないから、情熱が続かない。。
ちょっと儲からないと、もっと儲かるビジネスモデルはないかと探し出す。
僕も起業家だから気持ちは分かる。上手くいきそうなビジネスに飛びつきたいのは。でも、それは絶対にやめること。失敗のもとだから。そんな誰かのモノマネはどうせ長く続かない。
どんな事業にしても、それを始める理由が必要があるはず。こういう世界を、こういう社会をつくるために、これをやるんだという何かしらの目的がある。
社会づくりのために、何かしらのソーシャルチェンジのために、自分の人生をかけて起業する。だったら、ビジネスモデルを考える前にやることがあるんじゃないか?
そう。ビジネスモデルを考える前に必要なこと。それはソーシャルコンセプトを明確にすることです。
どういう社会をつくるために、自分は起業しようとしているのか。ビジネスというのはそれをカタチにするための手段に過ぎない、ということを忘れちゃいけない。
ボーダレスでは、社内外からビジネスプランの応募があるが、まず最初に出してもらうのはビジネスプランではない。1stステップは、このソーシャルコンセプト。
現状の何が問題なのか、あなたはどんな世界をつくりたいのか。そのためのアイデアは何なのか?
このHOWの部分をカタチにする手段が、ビジネスモデルに過ぎないということ。つまり、ビジネスモデルなんてそもそも何だってアリなんだ。
それを何が儲かるか、何が成功するか、とビジネスモデルから考えてしまうから迷宮入りしてまう。起業家にとって大切なのは、情熱を持ってやり続けるテーマを見つけること。
史上最年少で上場したって、人の記憶に残るのはたかが数年だ。そんなもののために起業するのはナンセンスでしょ。
自分はこの社会に何を遺したいのか、どんな社会がつくりたくて起業するのか、そういう絵を描いてみる。そうすると誰かのモノマネじゃない、もっとオリジナリティ溢れたビジネスモデルが出てくるはず。
そうやって生まれたビジネスは、情熱をもって最後まで追いかける。そして、必ず成功する。
事業に関する考え方をプレゼンする田口社長