タイトル:電園復耕~大通りからそれて楽しく我が道を歩こう

なぜ人を押しのけて狭き門に殺到するのか?自分を愛し迎えてくれる人たちとの人生になぜ背いて生きるのか?
この書き下ろしは、リクルートスーツの諸君に自分の人生を自分で歩み出してもらうために書いた若者のためのお伽話である。(作・吉田愛一郎)

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◆田園將に蕪れなんとす

末広が言った。
「杉山さん。本山市の農業委員会から不許可になったと言われたんですよね?」
「そうです」
「でも農業委員会の議事録にはそのような議事が有った事にはなっていねえよ」末広は言った。
「こりゃホームページの改ざんだ」
「えっ」「えっ」「えっ」三人が「えっ」と言った。

スマホから末広の選挙演説のような声が鳴り響いている。「これは酷い不正行為である、、、、、、」
あまり長いから、片桐が演説に同意する支持者のように「議事の内容の開示請求をしよう」と言ったので、弁士もスマホの向こうから「それはとても良い考えだ」と聴衆に答えるように言った。啓介も「異議ナーシ」杉山も「異議ありません」。そしてスマホからは末広の「ご異議がないので、本山市に農業委員会議事録の情報開示を要求しましょう」という声が聞こえて電話が終わった。片桐は自分のスマホを取り出して、市の広報に農業委員会の議事録の開示要求をした。そして3人は連絡を取り合う約束をして別れた。

山に帰った啓介が念のため本山市のウェブ情報の農業委員会のページを見ると、ホームページが全く変わっていた。そしてそこには、3条申請は許可されていると記されていた。しかし奇妙な文言も書かれていた。「3条申請は許可されたが、もし5条が許可されなければ許可された3条の許可は取り消される」とか書かれていた。
「なんのこっちゃ」と啓介は声に出して言った。
「社長」
「何だ」昼の休みで畦道に腰を掛けて、コンビニから買ってきた食パンの包みを破きながら末広が答えた。

啓介も同じことをしながら言った。「農地法の三条と五条のこともう一度教えてください」
やれやれと言う顔をして末広はガラスのポットに入っているハーブに湯を注いでいたリズのタブレットを手にして、一つのサイトを啓介に見せた。それはある行政書士が農地法のサイトで農地法の3条と5条が分かりやすく説明してあるものだった。

そこには3条は所有権の移転、5条が農地の転用が分かりやすく説明してあった。
つまり新たに営農型太陽光発電を実施するものは農地を借りるか買う必要があり、その農地にソーラーパネルを敷設するには農地を農地以外の物にしなければならないわけである。

■この続きは5月28日に掲載を予定しています