選択的シングルマザー(※SMCと略す)への注目が高まっている。2015年5月にオルタナSに掲載した記事『「幸せは人それぞれ」――選択的シングルマザーという生き方』は反響を呼び、その後はテレビなどでも大きく取り上げられるようになった。しかし、SMCの実態を正確に伝えているメディアは少なく、誤った理解が拡がっているのが実情だ。そこで、日本で唯一のSMCを研究・情報提供している「SMCネット」を運営する「女性と子育て研究所」による連載をスタートする。同団体が連載を受入れたのは初であり、複数回に渡ってSMCについて解説する。(オルタナS編集長=池田 真隆)

選択的シングルマザーは米国発

はじめまして。女性と子育て研究所代表兼SMCネット主宰の高田真里です。私たちは選択的シングルマザーおよび選択的シングルマザーになることを検討している女性への情報提供を行う団体です。

さて、これから選択的シングルマザーについて解説したいと思いますが、まずは日本の出生者数の変化と婚外子の比率の現状について解説します。日本の出生者数は第一次ベビーブームの1947年~1949年には260万人を超え、1949年には269万6638人と過去最高の出生数でした。

しかし、そこから減少や増加の変化があったのですが、1971年~1974年には第二次ベビーブームが起こります。これは第一次ベビーブームで生まれた人たちが親になったからと言われています。しかし、第二次ベビーブーム期での1973年以降は出生数が減少するようになり、直近の2016年では100万人を割る97万6978人になりました(厚生労働省「人口動態調査」より)。この結果からは第三次ベビーブームは起こらなく、そして少子化は年々進んでいることがわかると思います。

それでは次に親の婚姻関係を見たいと思います。2016年に生まれた97万6978人のうち、婚姻関係にある男女の間に生まれた「婚内子」は95万4576人(97.7%)で、婚姻関係にはない非婚の男女の間に生まれた「婚外子」は2万2402人(2.3%)となっています。

このように日本で生まれる子の多くは結婚した夫婦の元に誕生していることがわかると思います。この婚外子の数は半数以上が非婚の男女の間から生まれるスウェーデンやフランスなどと比較すると、とても少ないといえます。

これらのデータから、日本では非婚で母になる人が少ないことがわかったと思いますが、このような人たちは「望まない妊娠をしてしまったので仕方なく」というイメージを持たれがちです。しかし、妊娠前から自らの意志でシングルマザーになることを希望し、1人で子どもを産み育てる人もいます。そうしたタイプを「選択的シングルマザー(Single Mother by Choice:SMCと略す)」と言います。

「選択的シングルマザー」という言葉は、アメリカの心理療法士ジェーン・マテスが1981年に提唱したもので、「Single Mother by Choice」という組織も発足されています。ジェーン・マテスは自著「Single Mothers by Choice: A Guidebook for Single Women Who Are Considering or Have Chosen Motherhood(邦題:シングルマザーを選ぶとき)」で、選択的シングルマザーについて『独身の女性で母親になることを選択した人、心身の成熟した大人の女性で責任感にあふれ、シングルマザーになることで被害者意識をもつのではなく、むしろ力づけられたと思っている人たち』と述べています。

非婚シングルマザー=SMCではない

近年、日本では「非婚シングルマザー」が増加しています。そして、「 “非婚シングルマザー”=“選択的シングルマザー” 」と報道されているのをよく見かけます。しかし、非婚シングルマザーには妊娠前からシングルマザーになることを計画した人と、妊娠後にシングルマザーとなることを決めた人の2つのタイプがあります。

また、「選択的」という言葉ですが、この言葉からは計画性が連想され、妊娠後に出産を決めたタイプも同じ「選択的シングルマザー」とするのは分かり難いという声が日本ではよく聞かれるようになりました。

そこで、女性と子育て研究所では妊娠前からシングルマザーとなることを計画したタイプを「選択的シングルマザー(SMC)」、妊娠後にシングルマザーとなることを決めたタイプを「授かりシングルマザー」と定義しています。

さて、シングルマザーは大きく分けて3つに分類されます。その比率はこの数十年で大きく変化しています。1983年(昭和58年)には死別が36.1パーセント、離婚が49.1パーセント、未婚の母が5.3パーセントであるのに対し、2016年(平成28年)では死別が8.0パーセント、離婚が79.5パーセント、未婚の母が8.7パーセントと推移しています(「平成28年度全国ひとり親世帯等調査」より)。

最も増えたのは「離婚」ですが、「未婚の母」も増加傾向にあるのが分かると思います。しかし、未婚の母のうち、選択的シングルマザーがどれくらいの割合を占めるのかは、現状では調査が行われてないためにわかりません。そしてどのような選択的シングルマザーがいるのかもあまり知られていないと思います。そこで次回は選択的シングルマザーを選んだ女性たちについて解説したいと思います。(女性と子育て研究所代表/SMCネット主宰 高田真里)


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