——日々若者と接している横尾さんですが、今の若者は草食系や内向き思考などと世の中から揶揄されています。横尾さんの目から見て現代の若者はどう映りますか。

横尾:私は学生たちからは日々学びをもらっています。自分の思い込みからよりも学生のちょっとしたアイディアがクリーンヒットすることもあります。

世の中からそのように言われていますが、私は今の若者はふつふつと将来に対する野望や夢を抱いていると信じています。

だからこそ、学生たちそれぞれが自由な角度で物事を言い合える場所を作り出して、実際に議会で発表したりすることを通して、その学生を街のプロデューサーにさせることにやりがいを感じています。

私は次世代の為にこの数年間は予算措置も含めて、若者を応援して、活躍出来る場を様々な方法で用意することに注力します。社会の課題に向き合うハードルを下げることが大人たちの役割などではないかと思います。

■「何かしたいと踏み出せば何でも出来る」ということを体感してほしい

——若者を街のプロデューサーにさせることに注力していますが、なぜその活動を行うのに港区や赤坂を選んだのですか。

横尾:自ら住み、街の人が大好きなことに加えて、港区や赤坂から発信することが大事だと思ったからです。日本の中心は港区です。港区の中心は赤坂です。日本の中心であるここから発信して展開していくことこそ意義があると思っています。

現に港区には、日本の民放キー局はほとんど集まっています。だからこそ、影響をより強く与えることが可能です。

——横尾さんの学生の頃を教えてください。当時から社会問題に関心があったのですか。

横尾:小中高と絵に描いたような優等生でした。だからこそ、大学に入ったら自分のやりたいことをしようと頭を金髪にして、友達と遊び尽くしました。
そして、何となくアメリカにも行ってみたいという想いから、アメリカに留学しました。

大学3年生のときに日本に帰ってきたのですが、その時に9.11の同時多発テロが発生しました。私が留学時代にお世話になった人が事故当時ワールドトレードセンターにいて亡くなりました。

その時に、国際情勢に対する自身の無力感を味わいました。そこで、まず圧倒定に知識が足りないということで大学院に行き勉強することに決めました。

そこで、「世界学生会議」というイベントを開催し、友人と学生団体を設立しました。そこにはアメリカ、韓国、中国、アフガニスタン、エジプトなど大学の教授のつてなどを借りて海外から多くの学生を集めて総勢1000人でこれからの社会について話し合いました。

学生団体のメンバーとの写真。(写真左下)


このイベントの経験から「何かしようと踏み出せば何でも出来る」ということを実感しました。それと同時に、当初はNPOに就職したいと思っていましたが、実際既に世の中には良いことをしている団体がたくさんあるが、その団体の広報や団体間同士でのコミュニケーションがうまくいっていないことに気づきました。

だから、自分は団体をつなげることを出来るようになりたいと思い、コミュニケーションを学ぶために博報堂に入社しました。

——これからの社会を担う若者たちに期待していることは何ですか。

横尾:とにかく、若い人には、「世の中をこうしたい/こんな社会がいい」を追求し、何でもいいから、身近な小さなアクションをすることからはじめて欲しいと思っています。

答えがまだ見つかっていないということは、逆に言えば、何をしてもいいってこと。ボランティアに参加するでもいい。会社やNPOを立ち上げるでもいい。
選挙に行ってみるでもいい。政治家に声かけてみるでもいい。「迷ったら全部やる」という行動指針を置いた上で、何が自分にとって「より」気持ちのいいやり方か見つけていけばいいと思います。

正直私もまだ悩んでいる。NPOも政治家も、「ベスト」かどうかは分からない。だから、いろいろな可能性を知りたいと思って、学生にもどんどん聞いていきたい。

実は、ありがたいことに若者を応援したい大人は結構いる。迷ったら周りにいる大人に声をかけてみてほしい。大人たちもそういう若者たちからのアクションを待っている。

「失敗してもいいんだ」ということに気づき、今思っていることに正直に思い切り動いて欲しい。

横尾さんの事務所で開催されたパーティーにて(写真中央下)



■横尾としなり
1981年生。NPO法人グリーンバード副代表。一般社団法人リベラルアーツ推進協会代表。
港区議会議員(無所属)。早稲田大学大学院、広告会社の博報堂を経て現職。
街の課題を、若者や「社会のために役立ちたい」と思う人々の力で解消する仕組みづくりがテーマ。
第6回マニフェスト大賞受賞/元雑誌『広告』編集委員
http://www.ecotoshi.jp
twitter: @ecotoshi